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「創痕〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

創痕の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
妖婆」より 著者:芥川竜之介
顔を見ると、手をとらないばかりにして、例の裏座敷へ通しましたが、やがてその手足の創痕《きずあと》だの、綻《ほころ》びの切れた夏羽織だのに気がついたものと見えて、....
空中墳墓」より 著者:海野十三
狭い額、厚い唇、そして四角に折れた顎骨。それに耳の下から頤へかけて斜に、二寸位の創痕をありありと見た。おお、松風号に同乗した機関士|松井田四郎太! もう二十年前....
電気看板の神経」より 著者:海野十三
じ事で、不思譲なことに、殺害の時間も、短刀の大きさも、致命傷の位置も同じで、ただ創痕の深さが、すこし深いように報告されていた。 第二の惨劇の日につづく一両日の....
ウィリアム・ウィルスン」より 著者:佐々木直次郎
ないで書いた姓名や、怪異な形の絵や、その他さまざまな小刀で彫りつけたものなどの、創痕をつけられているので、かつては多少かたちを残していた原形の少しさえすっかり失....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
ように、歳とともに鍛錬せられゆく性格の重みを加え、環境との争闘から生じた痛ましい創痕を、雄々しくもむき出しに見せつけている。 松はこうした際立った性格のために....
太郎坊」より 著者:幸田露伴
葉を費したって何になろうか、ハハハハ、笑ってしまうに越したことは無い。云わば恋の創痕の痂が時節到来して脱れたのだ。ハハハハ、大分いい工合に酒も廻った。いい、いい....
小さな出来事」より 著者:寺田寅彦
和な、人の好さそうな表情があった。ただ額の真中に斜めに深く切り込んだような大きな創痕が、見るも恐ろしく気味悪く引き釣っていた。よく見ると右の腕はつけ元からなくて....
箱根熱海バス紀行」より 著者:寺田寅彦
とは少し違った種類の桜もあるらしい。関東地震や北伊豆地震のときに崩れ損じたらしい創痕が到る処の山腹に今でもまだ生ま生ましく残っていて何となく痛々しい。 宮の下....
怪奇人造島」より 著者:寺島柾史
蹴ると、急所をやられたか、そのまま息絶えた様子。このさまを見て、他の水夫――頬に創痕のある物凄い男が、 「よしッ! 兄弟の仇だ! 来い」と、叫んで、縮毛の大男に....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
や》として薫《かお》っていた。その濃い巻き毛の下には所々に、防寨《ぼうさい》での創痕《きずあと》である青白い筋が少し見えていた。 祖父は昂然《こうぜん》として....
潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
云うのは、上行大動脈に達している創底を調べると、そこには毫も、兇器の先で印された創痕がないばかりでなく、かえってその血管を、押し潰していることが判ったからだ。 ....
夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
現われたのです。ある八月の夕方、会堂の聖像が忽然と消え失せてしまって、その代り、創痕から何まで聖像と寸分も異ならない肉身の耶蘇が、十字架の下に神々しい屍体を横た....
触覚の世界」より 著者:高村光太郎
。こんな風に一人の彫刻家は人生をまでも観る。 或男はイエスの懐に手を入れて二つの創痕を撫でてみた 一人のかたくなな彫刻家は 万象をおのれ自身の指で触つてみる 水....
活人形」より 著者:泉鏡花
し折、鋭き小刀にて傷けられし名残なり。探偵の身にしては、賞牌ともいいつべき名誉の創痕なれど、衆に知らるる目標となりて、職務上不便を感ずること尠からざる由を喞てど....
ベートーヴェンの生涯」より 著者:ヴェーゲラーフランツ・ゲルハルト
の姿には、見るものの心を引き裂くような痛切なものがあった。」感激の昂奮のため彼の創痕がまたしても口を開いた。しかもなお彼は「彼の悲しい運命に同情の手を与えたけだ....