力無い[語句情報] » 力無い

「力無い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

力無いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
おさん」より 著者:太宰治
ひとを愛するなら、妻を全く忘れて、あっさり無心に愛してやって下さい。) 夫は、力無い声で笑い、 「変るもんか。変りやしないさ。ただもうこの頃は暑いんだ。暑くて....
鯉魚」より 著者:岡本かの子
か》け寄って、抱《だ》き起しながら 「どうしたのですか」 と訊《き》くと、娘は力無い声で、昨日から食事をしないので饑《う》えに疲《つか》れ、水でも一口飲もうと....
緑の芽」より 著者:佐左木俊郎
れな、涙ぐましい沈黙は正午になっても続いていた。松三は、母親の無い自分の子、この力無い表情を視続けることに堪えられなく思った。 「菊枝!」と、松三は突然、思い出....
新釈諸国噺」より 著者:太宰治
寝ころび、 「本当にもう、帰ってくれ。その顔を二度とふたたび見せてくれるな。」と力無い声で歎願した。 「ええ、帰ります。」と蕾は落ちついて、客のお膳の数の子を二....
笑い」より 著者:寺田寅彦
よ胸をくつろげて打診から聴診と進んで来るに従って、からだじゅうを駆けめぐっていた力無いたよりないくすぐったいような感じがいっそう強く鮮明になって来る。そうして深....
連環記」より 著者:幸田露伴
じている人に対しては、世法からの智愚の判断の如きは本より何ともすることの出来ぬ、力無いものである。又仏法から云っても是の如く慈悲の念のみの亢張するのが必ずしも可....
雪ちゃん」より 著者:寺田寅彦
らついて、そして時々工合が悪いと云っては梯子の上り下りの苦しそうな事があり、また力無い咳をするところなどを見るとあるいはと思う事があって友に計ったが、この家に数....
過渡人」より 著者:豊島与志雄
でもお父さんは何時もお忙しそうですね。」 「なにそうでもないがね。」と矢島さんは力無い調子で答えた。 「お隙の時何処か一緒に行ってみましょうか。」 「ああ行こう....
蘇生」より 著者:豊島与志雄
なかった。 食物を取ると、敬助は急に嗜眠《しみん》を覚えた。そしていつのまにか力無い眠りに陥っていった。 眠りの中に彼はこういうことを感じた。……高橋と斎藤....
幻の彼方」より 著者:豊島与志雄
する方へ頭を下げた。それを挙げようとする時、すぐ前の秋子の顔とぶつかった。口許に力無い薄ら笑いを湛えて、眼は涙ぐんでいた。 「ごらんなさいませ。」と産婆は云い続....
野ざらし」より 著者:豊島与志雄
作は暫く見ていたが、やがてまた顔を上げて、障子の硝子から外に眼をやりながら、底に力無い苛立ちを含んだ陰鬱な夢想に、長い間浸り込んだ。 けれど夜になると、その夢....
悪夢」より 著者:豊島与志雄
のどんよりした薄明りに、漸くそれと知られる、まるで夕暮のような夜明けだった。私は力無い危っかしい足取りで、曲りくねった小路をつきぬけ、近くの公園へ辿りついて、池....
変な男」より 著者:豊島与志雄
考えたことがないんですか。」 「ないわ。」 「本当ですか。」 「ええ。」と澄子は力無い返辞をした。 「嘘です。そんな筈はありません。私はあなたを、中村さんのよう....
」より 著者:豊島与志雄
どいやつが来たら、逃げようたって逃げられやあしない。死なば皆諸共さ。」 だが、力無い声の調子だった。 十二年の大地震に痛んだままの古い建物である。塗り直した....
立枯れ」より 著者:豊島与志雄
お逢いしたい、どこへでもいいから出て来て下さらない、というのだった。中江はへんに力無い冷淡さで、病気引籠り中なので外出できない、と返事をした。キミ子は何かとぐず....