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「劫火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

劫火の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
高島異誌」より 著者:国枝史郎
其時不思議や池の水、忽ち条々と噴き上がり、焔に向かって降りかかったので、さしもの劫火も瞬間に其勢力を失って、無事に館は助かった。斯うして不安の夏も逝き、秋の初め....
八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
礼したものである。 三 淡々しいように見えていてその実地獄の劫火のように身も心も焼き尽くすものは、初恋の人の心である。それを彼は抑えられた。....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、御恩の姫君。事おわして、お召とあれば、水はもとより、自在のわっぱ。電火、地火、劫火、敵火、爆火、手一つでも消しますでしゅ、ごめん。」 とばかり、ひょうと飛ん....
木の子説法」より 著者:泉鏡花
且つ健かに育っている。 不思議に、一人だけ生命を助かった女が、震災の、あの劫火に追われ追われ、縁あって、玄庵というのに助けられた。その妾であるか、娘分であ....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
や、その中腹にくっきりと黒く、一本の肋骨のようなものが見えるだろう。それが地獄の劫火ほの見える底なし谷といわれている、黒い骨の「大地軸孔」。 そこは、たぶんめ....
後光殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
強烈な精神凝集が起ると云う事は、心理学上当然な推移に違いないのだ。今に兜率天から劫火が下って薬師如来の断罪があるだろう――とそう云う疑念を、鋭敏な膜の様に一枚残....
万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
火もがも」という句は、これだけを抽出してもなかなか好い句である。天火は支那では、劫火などと似て、思いがけぬところに起る火のことを云って居る。史記孝景本記に、「三....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
朴であり、一つは獰猛《どうもう》であり、一つは曙の聖《きよ》い白色に浸り、一つは劫火《ごうか》の反映で永久に青ざめている、二つの額が、相並ぶこともあるのか。その....
紫大納言」より 著者:坂口安吾
怖れませぬ。あらゆる報いも、御意のままです。甘んじて、八つざきにもなりましょう。劫火に焼かれて死ぬことも、いといませぬ。ただ、私には、たったひとつの願いがありま....
アンゴウ」より 著者:坂口安吾
主役たちはイノチを目を失っているというのに、たった一つ地上に承った秘密の爪の跡が劫火にも焼かれず、盗人の手をくゞり、遂にかくして秘密の唯一の解読者の手に帰せざる....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
うには行かない。かれの蔵書はすべて焼けて灰になっているのである。梅花の巻に代えて劫火の巻が眼前に展開する。またしても寂しい思いがさせられる。せっかく明るくなって....
淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
やその他の寺宝と共に尽く灰となってしまったが、この門前の椿岳|旧棲の梵雲庵もまた劫火に亡び玄関の正面の梵字の円い額も左右の柱の「能発一念喜愛心」及び「不断煩悩得....
エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
滅の後七年めの今日、メディナ・シドニア公の顔の上をはじめてかすめた。ついに、この劫火のうちの、我慢ならぬ大量焼棄をもって、彼は敵をだし抜くことができたのだった。....
随筆 私本太平記」より 著者:吉川英治
るべきものはない。破壊につぐ破壊であった。ドライな人心が演じる乾いた戦いはこうも劫火なものになるという必然を太平記は書きつくして余りがない。そしてそんな世に会し....
雷門以北」より 著者:久保田万太郎
、銀杏だの、椎だの、槙だののひよわい若木のむれにまじって、ありし日の大きな木の、劫火に焦げたままのあさましいその肌を日にさらし、雨にうたせているのを心細く見出す....