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匐
「匐〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
匐の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
《くろ》ずんだその幹に千社札が一枚斜に貼りつけられてあって、その上を一匹の毛虫が
匐《は》っていた。そんなことまでが、夏見たままの姿で園の眼の前に髣髴《ほうふつ》....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
んじゃねえけれど、娑婆の違った獣だ、盆に来て礼を云え。」 と突飛ばすと、閑耕の
匐った身体が、縁側で、はあはあ夢中になって体操のような手つきでいた英吉に倒れかか....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
時々私の姿が、母を失った嬰児の如く私の眼に映るからだ。嬰児は何処をあてどもなく匍
匐する。その姿は既に十分|憐れまれるに足る。嬰児は屡※過って火に陥る、若しくは水....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
。 ◯育郎ちゃん、ちょうど生後半年。今、うちに在り、元気にて、ひっくりかえりて腹
匐う事を覚えたり。父親の徹郎君は過日広島へ赴き、新就職。 七月二十七日 ◯浪速....
「鞄らしくない鞄」より 著者:海野十三
れから二三十分経ったと思われる後のこと、例のトランクは再び、のそのそと店から外へ
匐《は》い出《だ》していったのである。店員はそれを見て知っていた。そのトランクを....
「奇賊は支払う」より 著者:海野十三
はきゃっと叫んで椅子と共に後へひっくりかえった。 一匹の毒蛇が悠々と絨毯の上を
匐っていた。その毒蛇の首には紙片が結びつけてあって、それには次のような文字が認め....
「奇賊悲願」より 著者:海野十三
あたりで切断をしてしまった。刑事は、すってんころりと転んだが、気丈夫な奴と見えて
匐いながら、千切れた脚をつかんで頭の上にさしあげたと思うと、ぱったり倒れて動かな....
「暗号音盤事件」より 著者:海野十三
窓硝子が水のように飛び散った。 と、こんどは白木がひらりと身を翻して床の上に腹
匐いになると、例の機銃を肩にあてて遂に銃声はげしく撃ちだした。私の身体は、びーん....
「英本土上陸作戦の前夜」より 著者:海野十三
からまた歩きだしたが、何思ったか、また引返した。そして舗道のうえを風にあおられて
匐っていく、包紙の新聞紙を、靴の先で踏まえた。彼は、その新聞紙をとりあげて見てい....
「怪塔王」より 著者:海野十三
げ、どなっては投げ、敵の荒くれ男をころがしました。 ルパシカ男も黒人も、地上に
匐って、うんうんうなっています。 どーん。 どどどーん。 その時です。銃声....
「浮かぶ飛行島」より 著者:海野十三
の輪郭も見えない。ひゅうひゅうと鉄骨の間をぬってくる烈風の響、ざざざーっと支柱を
匐いのぼる激浪の音に、応える人の声はもみ消されて聞えない。 「そんな弱気を出して....
「転機」より 著者:伊藤野枝
見たって、真黒ないい土らしいじゃないか。」 「そういえばそうね。」 私は土手を
匐うように低く生えた笹の葉の緑色を珍らしく見ながらそういった。この先の見透しもつ....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
ったのを、にわかに恥じて、差翳した高慢な虫眼鏡を引込めながら、行儀悪くほとんど匍
匐になって、頬杖を突いている滝太郎の顔を瞻って、心から、 「あなたの目は恐いのね....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
葉を思い出した。それは邯鄲の歩みを学ばないうちに寿陵の歩みを忘れてしまい、蛇行匍
匐して帰郷したと云う「韓非子」中の青年だった。今日の僕は誰の目にも「寿陵余子」で....
「醜い家鴨の子」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
そのうち大きい卵が割れてきました。そして、 「ピーピー。」 と鳴きながら、雛鳥が
匐い出してきました。それはばかに大きくて、ぶきりょうでした。母鳥はじっとその子を....