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千人針
「千人針〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
千人針の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「築地河岸」より 著者:宮本百合子
中年のおかみさんが、必死の面持で通行人をつかまえては、鬱金《うこん》木綿に赤糸で
千人針をたのんでいるのであった。 「一人だっておんなじ人が縫ったら駄目になっちゃ....
「三月の第四日曜」より 著者:宮本百合子
重瞼に険をふくませ、黙りこくっていた。 四 暫く見かけなかった
千人針が、駅の附近にちらほらしはじめた。サイは謂わば
千人針の東京へ出て来て暮すよ....
「播州平野」より 著者:宮本百合子
やがて直次が入営し、現役からかえり、更に召集されて北支にやられた。日本中で、
千人針が縫われ、駅々街々で紙の小旗がふられていた。その留守に重吉の父は歿した。大....
「文芸時評」より 著者:宮本百合子
《うこん》の布に朱でマルを印したものと赤糸とをもって立っていて女の通行人を見ると
千人針をたのんでいる。出会い頭に、ああすみませんがと白縮のシャツの中僧さんにたの....
「歴史の落穂」より 著者:宮本百合子
。屋根も土も木も乾きあがって息づまるような熱気の中を、日夜軍歌の太鼓がなり響き、
千人針の汗と涙とが流れ、苦しい夏であった。長谷川時雨さんの出しておられるリーフレ....
「新しい婦人の職場と任務」より 著者:宮本百合子
のかげの守り、として家庭の敷居内での存在であった。 ところが夏前後から、街頭に
千人針をする女の姿が現れはじめた。良人を思い、子を思う妻と母との熱誠が、変化した....
「祭日ならざる日々」より 著者:宮本百合子
千人針の女のひとたちが街頭に立っている姿が、今秋の文展には新しい風俗画の分野にと....
「これから結婚する人の心持」より 著者:宮本百合子
その最悪の場合というものを考えて、結婚をのばし、躊躇する気分ではなかったろうか。
千人針というようなものが目新しい街頭風景であった頃は、確かにその気分が親たちの分....
「私たちの建設」より 著者:宮本百合子
は結婚したばかりの人達でさえ、自分達の初々しい家庭生活を保つことは出来なかった。
千人針を持って、電車の中や駅の前や勤務先などで縫って貰っている若い女性達は、その....
「美しく豊な生活へ」より 著者:宮本百合子
好きな髪に結って居ってもよかったのが、勇ましい髪形をしなければならなくなったり、
千人針に動員されたことから次第に、動員の程度がひどくなって、終りには学校工場に働....
「文学への実感について」より 著者:豊島与志雄
とであろう。即ち、火野葦平氏の「土と兵隊」のはじめの方に、或る兵が船の甲板から、
千人針の布を海中に落し、泳ぎを全く知らない身でありながら、その布を追っかけて海に....
「千人針」より 著者:寺田寅彦
が流行したが、これらはいつの間にか下火になった。そうしてこの頃では到る処の街頭で
千人針の寄進が行われている。これは男子には関係のないだけに、街頭は街頭でも、何と....
「人間山中貞雄」より 著者:伊丹万作
気がする。 入営から何日か経つて面会を許された日があつたので、女房のこしらえた
千人針を持つて行つてみた。いろんな人が入りかわり立ちかわり面会に来るので、その下....
「勝ずば」より 著者:岡本かの子
うになった。 町の人は町角で――政枝は床に起き直って家の女手に向って頼みに来る
千人針を二針三針縫った。 政枝はラジオ戦勝ニュースを聴くのを楽しみにした。 ....
「挙国一致体制と国民生活」より 著者:戸坂潤
るのである。 七八百万円にのぼる国防献金、街頭至る処に所狭いまでに氾濫している
千人針婦人、これは生きた事実である。決して空疎な流行でも何でもないだろう。国防献....