卒然[語句情報] »
卒然
「卒然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
卒然の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「十円札」より 著者:芥川竜之介
パイプを啣《くわ》えたまま、いつもちょっと沈吟《ちんぎん》した。それからあたかも
卒然《そつぜん》と天上の黙示《もくじ》でも下《くだ》ったように、「これはこうでし....
「毛利先生」より 著者:芥川竜之介
教室だけで顔を合せた自分なぞを覚えていまい。よしまた覚えているとしても――自分は
卒然《そつぜん》として、当時自分たちが先生に浴びせかけた、悪意のある笑い声を思い....
「沼地」より 著者:芥川竜之介
ば》と共に肩を叩かれた私は、あたかも何かが心から振い落されたような気もちがして、
卒然と後《うしろ》をふり返った。
「どうです、これは。」
相手は無頓着《むとん....
「或る女」より 著者:有島武郎
眠りにおちいるのだった。貞世の眠るのと共に、なんともいえない無気味な死の脅かしが
卒然として葉子を襲った。部屋《へや》の中にはそこらじゅうに死の影が満ち満ちていた....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
の公判のなんたるを知らざるがごとし。かたわらにいたる旅商人《たびあきゅうど》は、
卒然|我《われ》は顔《がお》に喙《くちばし》を容《い》れたり。 「ああ、なんでご....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
息苦しく思われたのだ。一刻もじっとしていられない気持で、豹一はまるで逃馬のように
卒然となぐり書きして、あっという間に答案を提出してしまった。むろん、読み返しもし....
「弓町より」より 著者:石川啄木
は、ちょうど私自身が口語詩の試みに対して持った心持に類似点があるのを発見した時、
卒然として私は自分自身の卑怯《ひきょう》に烈しい反感を感じた。この反感の反感から....
「闖入者」より 著者:大阪圭吉
返っていた。――洋画家の川口亜太郎が、辻褄の合わぬ奇妙な一枚の絵を描き残したまま
卒然として怪しげな変死を遂げてしまったのは、この静かな山荘の、東に面した二階の一....
「売春婦リゼット」より 著者:岡本かの子
彼女は毎夜のような流眄を八方に配り出した。しかも今夜の「新らしい工夫」に気付くと
卒然と彼女の勇気が倍加した。 リゼットは鋸楽師の左の腕に縋っておぼこらしく振舞....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
だことはございませぬ。その時の光景はとても私の拙い言葉で尽すことはできませぬ。何
卒然るべくお察しをお願いします……。 瀑布の修行場では、私が実際瀑布にかかった....
「飯田蛇笏」より 著者:芥川竜之介
い連中よりも高等に違いないと思ったのである。 爾来更に何年かを閲した今日、僕は
卒然飯田蛇笏と、――いや、もう昔の蛇笏ではない。今は飯田蛇笏君である。――手紙の....
「大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
しそんな説明は三右衛門は聞いてはいなかった。考えに沈んでいたのであった。 と、
卒然と三右衛門は云った。「百両のお金がございましたらせめて当座の借金だけでも皆済....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
時も時、学校を罷めて何をするという方角もなく、満腔の不平を抱いて放浪していた時、
卒然としてこの文学勃興の機運に際会したは全く何かの因縁であったろう。 当時の春....
「四十年前」より 著者:内田魯庵
いると同じであった。が、大勢は終に滔々として渠らを置去りにした。 かかる折から
卒然|崛起して新文学の大旆を建てたは文学士|春廼舎朧であった。世間は既に政治小説....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
五寸引き、次第に引き寄せしが、船前六尺ばかりにて、がばと水を扇りて躍り、綸の張り
卒然失せぬ。逸し去りしなり。 『ちェッ』と舌打ちして、二三秒間、綸を手にせるまま....