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取囲む
「取囲む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
取囲むの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
ば、黛色の連山波濤の如く起伏して居る。彼山々こそ北海道中心の大無人境を墻壁の如く
取囲む山々である。関翁の心は彼の山々の中にあるのだ。余は窓に凭って久しく其方を眺....
「光と風と夢」より 著者:中島敦
イドは腹をこわし、私は瀟洒たる小喀血《しょうかっけつ》。 何か不快な朝だ。我を
取囲む錯雑せる悲惨《みじめさ》の意識。事物そのものに内在せる悲劇が作用《はたら》....
「悟浄出世」より 著者:中島敦
《ほら》の奥で巨鼇《きょごう》の背に座った黒卵道人《こくらんどうじん》も、それを
取囲む数十の弟子たちも、口にすることといえば、すべて神変不可思議《しんぺんふかし....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
馬を睨《にら》んで唸っています。逃げ足の立った見物は、ここでまた引返して四方から
取囲むとこれは思いがけぬ槍試合、槍を上段につけたまま兵馬が一歩進むと米友が一歩退....
「独本土上陸作戦」より 著者:海野十三
その大広間は、一見ひろびろとしていた。ただ真中のところに、一つの卓子と、それを
取囲む十三の椅子とが、まるで盆の真中に釦が落ちているような恰好で、集っていた。そ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
ました」
お取持が、扇子をパチパチさせながら、狼狽《ろうばい》ぶりを見せると、
取囲む見物がドッと笑う。
「奇妙奇妙」
道庵までが、悦に入って喝采する。米友に....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
おい、われわれどもは剣術を遣《つか》いに来たのではないぞ」 七人の者が、与八を
取囲むようにしました。 「はい」 与八は、ぼんやりしました。いつもの客ならば、....
「鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
くあったので、既に南隣の大洲藩でもなかなかの騒ぎであった。一揆の全部は既に藩庁を
取囲むに至ったので、権大参事の山本某というもっぱら藩政の枢軸に当っていた人が、自....
「孔乙己」より 著者:井上紅梅
うなことがあった。騒々しい笑声が起ると、子供等はどこからとなく集って来て孔乙己を
取囲む。その時茴香豆は彼の手から一つ一つ子供等に分配され、子供等はそれを食べてし....
「塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
も原も打殺してしまえと云うので、是から百姓五六十人が得物々々を持って、鹽原の家を
取囲むというお話に相成ります。扨また鹽原多助は進退こゝに谷まり、已むことを得ず今....
「田舎医師の子」より 著者:相馬泰三
た、老医師はいうたであろう。 「決して一人という事を思うべきでない。人間はそれを
取囲む雰囲気が必要である。それだから各人が「自分だけの都合、勝手という考からでき....
「なよたけ」より 著者:加藤道夫
け、老爺の背後を通って、左手の小路へ出る。わらべ達は嬉しそうになよたけのまわりを
取囲む。 蝗麻呂 ねえ、どこへ行こうか、なよたけ! こがねまる また街道の見える....
「備前天一坊」より 著者:江見水蔭
あった。 「やァ評判の半田屋の娘が涼みに出た」 忽ち人は注目して、自然にお綾を
取囲むので、さなきだに備前の夕凪。その暑苦しさにお綾は恐れをなして、急いで吾家へ....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
とりには金髪のニンフの群れる――また人の唯夢にのみ見るを得るもの、またわれわれを
取囲む醒めた現実、それ等は凡て彼の心中に浸透して後、初めてその美を得来ったのだ。....
「荘子」より 著者:岡本かの子
た。 荘子が遜に連れられ洛邑の麗姫の館に来たのは夕暮を過ぎて居た。二人は中庭を
取囲むたくさんの部屋の一つに通された。星の明るい夜で満天に小さい光芒が手を連ねて....