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口の端
「口の端〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
口の端の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
どうしてもそれができなかった。倉地はその様子を見ると今度はまじめになった。そして
口の端《はた》まで持って行った葉巻をそのままトレイの上に置いて立ち上がりながら、....
「或る女」より 著者:有島武郎
欲念が胸の中でははち切れそうに煮えくり返っていた。けれども葉子はどうしてもそれを
口の端《は》に上《のぼ》せる事はできなかった。その瞬間に自分に対する誇りが塵芥《....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
それは神ならぬ人間の本音ではない。余儀ない事情に迫られ、無理に言わせられた表面の
口の端に過ぎないのだ。 おとよは独身になって、省作は妻ができた。諦めるとことば....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
た。 「子供等よ、騒ぐでないぞ、森の菌霊が臼搗くときぞ」 むす子は、おかしさが
口の端から洩れるのをそのまま、子供等に対する家長らしい厳しい作り声をあっさり唇に....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
きの屈託とでもいう事か。」 と言い懸けて、渋茶にまた舌打しながら、円い茶の子を
口の端へ持って行くと、さあらぬ方を見ていながら天眼通でもある事か、逸疾くぎろりと....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
おっしゃって。) とお道さんが、ひったり寄った。 (私は、) と先生は、肘で
口の端を横撫して、 (髯もまずいが、言う事がまずくて不可んです。間違じゃあない、....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
……はて、飛んでもねえ、肉親のご新姐ござらっしゃる。」 と、泥でまぶしそうに、
口の端を拳でおさえて、 「――そのさ、担ぎ出しますに、石の直肌に縄を掛けるで、藁....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
くて、外へ出られないもんですから、お内へ入ってかくれました。それだし、ただ、人の
口の端の串戯だけでも、嫁だなぞと、あなたのお耳へ入ったらどうしようと、私……私を....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
だ手はそのままなり。 洲の股の御前、傍より、 「お婆さん、ちょっとその※の針で
口の端縫わっしゃれ、声を立てると悪いわや。」 「おいの、そうじゃの。」と廊下でい....
「露肆」より 著者:泉鏡花
れなのに、自分から吃驚して、 「はっ、」と、突掛る八ツ口の手を引張出して、握拳で
口の端をポン、と蓋をする、トほっと真白な息を大きく吹出す…… いや、順に並んだ....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
、たとえば趙太爺のような人と交渉があってこそ、初めて彼等の口に端に掛るのだ。一遍
口の端に掛れば、打っても評判になるし、打たれてもそのお蔭様で評判になるのだ。阿Q....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
まれて肩で呼吸。 思出したように急がしく掻込んで、手拭の端でへの字に皺を刻んだ
口の端をぐいと拭き、差置いた箸も持直さず、腕を組んで傾いていたが、台所を見れば引....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
で。 「理窟はないとおっしゃいますがね、先生、時と場合と代物に因るんですよ。何も
口の端を抓られるばかりが口惜いというんじゃアありません、時に因りますとね、蚊が一....
「鴎外博士の追憶」より 著者:内田魯庵
んな珍本は集めないよ、僕のは安い本ばかりだと、暗に珍本無用論を臭わした。が、その
口の端から渋江抽斎の写した古い武鑑(?)が手に入ったといって歓喜と得意の色を漲ら....
「活人形」より 著者:泉鏡花
。得たりと医師は膝立直して、水薬を猪口に移し、「さあこれをお飲みなさい。と病人の
口の端に持行けば、面を背けて飲まんとせず。手をもて力無げに振払い、「汝、毒薬だな....