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合歓
「合歓〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
合歓の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
しれない。)隔てる、くずれかかった築土《ついじ》があって、その中に、盛りをすぎた
合歓《ねむ》の木が二三本、こけの色の日に焼けた瓦《かわら》の上に、ほほけた、赤い....
「富士」より 著者:岡本かの子
。薦《こも》、水葱《なぎ》に根を護られながら、昼は咲き夜は恋宿《こいする》という
合歓《ねむ》の花の木が岸に並んで生えている。翁はこの茂みの下にしばらく憩って、疲....
「老妓抄」より 著者:岡本かの子
石炭殻の地面の間に、ほんの切れ端になってところどころに残っていた。綾瀬川の名物の
合歓《ねむ》の木は少しばかり残り、対岸の蘆洲《あしず》の上に船大工だけ今もいた。....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
るを見、俯して、濠の水の走るを見た。たちまち一朶紅の雲あり、夢のごとく眼を遮る。
合歓の花ぞ、と心着いて、流の音を耳にする時、車はがらりと石橋に乗懸って、黒の大構....
「闖入者」より 著者:大阪圭吉
、明かに白緑色を呈している。 「先晩、調べてみましたがね」大月が云った。「あれは
合歓木の木立でしたよ。そら、昼のうちは暗緑色の小葉を開いていて、夕方になると、眠....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
、一番手前の糸杉と無花果とが、土星と木星の所管とされているし、向う側の中央にある
合歓樹は、火星の表徴になっているのだ。またそれを、曼陀羅華・矢車草・苦艾と、草木....
「家」より 著者:島崎藤村
寄せながら、一緒に降って来る雨を眺めた。廊下の欄から手の届くほど近いところには、
合歓木や藤が暗く掩い冠さっていた。雫は葉を伝って流れた。 冷々とした空気は三吉....
「魚の序文」より 著者:林芙美子
ばらく、僕はうたたねしてしまったらしい。――ふと眼が覚《さ》めると彼女は、遠くの
合歓《ねむ》の花の下で、紅の帯をといて、小川の水で顔や手足を洗っていた。 遠く....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
向った青行燈の抽斗を抜くと、そこに小道具の支度があった……白粉刷毛の、夢の覚際の
合歓の花、ほんのりとあるのを取って、媚かしく化粧をし出す。 知ってはいても、そ....
「落合町山川記」より 著者:林芙美子
いい家で、近所が大変にぎやかであった。二階の障子《しょうじ》を開けると、川添いに
合歓《ねむ》の花が咲いていて川の水が遠くまで見えた。 東中野の駅までは私の足で....
「環礁」より 著者:中島敦
》の音がする。ブラブラと白い道を歩いて見た。バナナの大きな葉が風にそよいでいる。
合歓《ねむ》の葉が細かい影をハッキリ道に落している。空地に繋《つな》がれた牛が、....
「「太平洋漏水孔」漂流記」より 著者:小栗虫太郎
。これは元来ハイチ島の禁制物、“Piptadenia peregrina”という
合歓科の樹の種だ。土人は、そのくだいた粉を鼻孔に詰めて吸う。すると、忽ちどろどろ....
「取返し物語」より 著者:岡本かの子
舞台半転 (源右衛門宅の裏の浜辺。源右衛門の家の背戸は、葉の落ちた野茨、
合歓木、うつぎなどの枝木で殆んど覆われている。家の腰を覆うて枯蘆もぼうぼうと生え....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
な境遇にいるのに、失望がましき心を起こしてはならないと思いました。彼女は春の夕、
合歓の匂いに、恋しいような、懐かしいような心のあこがれをそそられて、その樹を抱い....
「夏の町」より 著者:永井荷風
燃えるような強い色彩を午後《ひるすぎ》の炎天に輝《かがやか》し、眠むそうな薄色の
合歓《ねむ》の花はぼやけた紅《べに》の刷毛《はけ》をば植込《うえご》みの蔭なる夕....