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「呼息〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

呼息の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
彼岸過迄」より 著者:夏目漱石
くちびる》にもう薄く紫の色が注《さ》していた。口へ掌《てのひら》を当てがっても、呼息《いき》の通う音はしなかった。母は呼吸《こきゅう》の塞《つま》ったような苦し....
こころ」より 著者:夏目漱石
ち》へでも出掛けるものと想像した。先生はその音を聞くと、急に瞑想《めいそう》から呼息《いき》を吹き返した人のように立ち上がった。 「もう、そろそろ帰りましょう。....
坑夫」より 著者:夏目漱石
はあるまいが、その代り咽喉がいっぱいに塞《ふさ》がって、芋が食道を通り越すまでは呼息《いき》の詰る恐れがある。それを小僧はいっこう苦にしない。今咽喉がぐいと動い....
行人」より 著者:夏目漱石
はこの明るい世界もまた今やり過ごした冬と同様に平凡だという感じがあった。けれども呼息《いき》をするたびに春の匂《におい》が脈《みゃく》の中に流れ込む快よさを忘れ....
明暗」より 著者:夏目漱石
ていた。彼らは穏和《おだや》かであった。彼らは楽しそうに見えた。お互の吐《は》く呼息《いき》に酔っ払った彼らは、少し醒《さ》めかけると、すぐ眼を転じて誰かの顔を....
道草」より 著者:夏目漱石
ない健三ではなかったが、目前《まのあたり》この猛烈な咳嗽《せき》と消え入るような呼息遣《いきづかい》とを見ていると、病気に罹《かか》った当人よりも自分の方がかえ....
三山居士」より 著者:夏目漱石
に濡《ぬ》れ尽くした。外を歩くと自分の踏む足の下から、熱に冒《おか》された病人の呼息《いき》のようなものが、下駄《げた》の歯に蹴返《けかえ》されるごとに、行く人....
」より 著者:夏目漱石
頬と芥子《からし》を貼った襟元《えりもと》が少し見えるところも朝と同じであった。呼息《いき》よりほかに現実世界と交通のないように思われる深い眠《ねむり》も朝見た....
思い出す事など」より 著者:夏目漱石
て、死生《しせい》の境《さかい》に彷徨《ほうこう》していた頃である。思うに教授の呼息《いき》を引き取ったのは、おそらく余の命が、瘠《や》せこけた手頸《てくび》に....
聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
の大鐘がそれぞれ反対の方向へ交互に振動する――などを知った。それから少し経って、呼息が白い煙のように見え始めて来ると、今度はルキーンの服装に気がついた。帽子外套....
マードック先生の『日本歴史』」より 著者:夏目漱石
して足の眼に及ばざるを恨みとして、焦慮《あせり》に焦慮《あせっ》て、汗を流したり呼息《いき》を切らしたりする。恐るべき神経衰弱はペストよりも劇《はげ》しき病毒を....
北斎と幽霊」より 著者:国枝史郎
入れる。 融川は俯向き首垂れていた。膝からかけて駕籠一面飛び散った血で紅斑々、呼息を刻む肩の揺れ、腹はたった今切ったと見える。 「無念」 と融川は首を上げた....
地虫」より 著者:小栗虫太郎
早苗は真赤に泣きはらした顔を、左枝の胸のなかに埋めた。波形をなした線、柔らかな呼息、そうして丸い形と、高まった頂きを見せた固い乳房が、左枝を焦だたしいまでに唆....
誤った鑑定」より 著者:小酒井不木
迫すると呼気を出すが、他絞即ち他人に頸をしめられる場合には、絞める力が強く、且つ呼息時に行われるから死体の胸部を圧迫しても呼気を出さない。第二に、自絞の場合には....
それから」より 著者:夏目漱石
けが高く響いた。代助は馳けながら猶恐ろしくなった。足を緩《ゆる》めた時は、非常に呼息《いき》が苦しくなった。 道端に石段があった。代助は半ば夢中で其所へ腰を掛....