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咫尺
「咫尺〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
咫尺の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「尼提」より 著者:芥川竜之介
ちもたいていは身分の高い人々である。罪業《ざいごう》の深い彼などは妄《みだ》りに
咫尺《しせき》することを避けなければならぬ。しかし今は幸いにも無事に如来の目を晦....
「路上」より 著者:芥川竜之介
は、実にこのもの思わしげな、水々しい瞳《ひとみ》の光だった。彼はその瞳の持ち主と
咫尺《しせき》の間に向い合った今、再び最前の心の動揺を感じない訳には行かなかった....
「二つの手紙」より 著者:芥川竜之介
は、一体誰だったでございましょう。閣下、私はこの時、第二の私と第二の私の妻とを、
咫尺《しせき》の間に見たのでございます。私は当時の恐しい印象を忘れようとしても、....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
は、戸外の闇の中に消えていた。 非常管制の警報は、いつしか熄んでいた。 外は
咫尺を弁じないほど闇黒だった。 弦三は、背中に、兄に贈るべきマスクを入れた包み....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
蒸気のために濡れたのだ。どっちを見ても濛々と白い水蒸気が立ちこめていて、文字通り
咫尺を弁じない。同じ船の中の水夫の姿さえ、薄絹の奥にあるようだ。朦朧として見究め....
「極楽」より 著者:菊池寛
した。その声に応ずるように御姿だけは幾度拝んだか分らない阿弥陀如来が忽然として、
咫尺の間に出現し給うた。おかんは、御仏に手を取られて夫宗兵衛の坐って居る蓮の台へ....
「二、〇〇〇年戦争」より 著者:海野十三
おいて、不慮の衝突事件を惹起せり。若干の爆発音を耳にする。海水は甚だしく混濁し、
咫尺を弁ぜず。余は直に――」 電文は、そこで、ぷつりと切れている。通信隊員の懸....
「地球要塞」より 著者:海野十三
覚悟をきめた。折柄、クロクロ島の沈没しているあたりは、煙のような乾泥がたちこめ、
咫尺《しせき》を弁じなかった。私はその暗黒海底を巧みに利用して、その物陰から、敵....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
戦慄すべき害毒を人間界に流し得るかを会得したであろう。身を切る如き絶望の冷たさ、
咫尺を弁ぜぬ心の闇、すべてはただ人肉のうめきと、争いとであった。さすがに霊界の天....
「バークレーより」より 著者:沖野岩三郎
私はいつも此の通りに立っている。或時は寒流から押しよせて来る濃霧のために、眼前|
咫尺を弁じない事もあるが、今日のように、あの美しいタマルパイの姿をくっきり見せて....
「瘠我慢の説」より 著者:木村芥舟
語りければ、一船ここに至りて皆はじめて愕然たり。 予が新銭座の宅と先生の塾とは
咫尺にして、先生毎日のごとく出入せられ何事も打明け談ずるうち、毎に幕政の敗頽を嘆....
「迷信解」より 著者:井上円了
通りかかりしに、日いまだ全く暮れたるにあらざるに、にわかに四面暗黒となり、目前|
咫尺を弁ぜず、一歩も進むことあたわざるようになりてきた。よって自ら思うには、これ....
「穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
恐れて近かねば、岩燕や雷鳥でも躊躇するだろう、何だか形容のしようもない。今眼前|
咫尺に、この偉観に接した自分は、一種の魔力に魅せられてか、覚えずあっとしたまま、....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
れて、互に離れ離れになって了った。其中でも忠一は勇気を鼓して直驀地に駈けた。が、
咫尺も弁ぜざる冥濛の雪には彼も少しく辟易して、逃るとも無しに彼の空屋の軒前へ転げ....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
。少くとも暫くの間は手すさびに指へ絡んでみたり掌中へまるめてみたりする。 僅に
咫尺を弁じ得る濃い白雲の中を、峰伝いに下っては登り登っては下って行く。四十雀や山....