咽せ返る[語句情報] » 咽せ返る

「咽せ返る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

咽せ返るの前後の文節・文章を表示しています。該当する9件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
蔭から顔を覗かせたのは、母指ほどの山椒魚であった。 清らかな空気には花の香が、咽せ返るほどに籠っていた。 お伽噺の空想の国! 船は辷って行くのであった。 ....
八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
大男が花を分けて現われたが、二人の姿をチラリと見ると逃げるように隠れ去った。 「咽せ返るようなよい匂いだ」葉之助は幾度も深呼吸をしたが、「これは何んという花でご....
人間繁栄」より 著者:豊島与志雄
筋目の深くくくれた蝋細工のような片手で、やんわりと持ち添えながら、息もつかずに、咽せ返るほどぐっぐっと飲み下していった。冴えきった冷い月の光が、斜め上から降るよ....
童貞」より 著者:豊島与志雄
裸のままで母の前を……。 そんなこといつだって平気だったんだが……。 ふと、咽せ返るような追想に、足が竦んでしまった。 意気地なしめ、なあに……。 擽っ....
」より 著者:豊島与志雄
に感ぜられる。日の光が強くなる。若葉が光ってくる。 若葉の光りに、和田弁太郎は咽せ返る。椿の固い葉までが光ってくる……。 大きな椿、その真黒な実、それを竿の....
交遊断片」より 著者:豊島与志雄
後日までに脚本を一つ書かなくちゃならなくなって……。こんなのどうだろう。晩春……咽せ返るような晩春の庭、そして手入れも何もしてない廃園という感じ……廃園の晩春と....
朝やけ」より 著者:豊島与志雄
に、彼女の乳房にますます顔を押しあて、両手で縋りついていった。そして彼女の体温に咽せ返ると、寝返って彼女の方へ背を向けた。 おれは酔っていたのではない。だが、....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
ろ眼の縁だけに燐光を帯びている獣だそうだ。まあ聞きたまえ読むからね」 南欧桜の咽せ返るような濃厚な花の香が窓を通して室の中いっぱいに拡がっていた。その室でレザ....
明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
も無理はなかった。まして、わたしの見物した日は日曜日であったから、実に人いきれで咽せ返るような混雑であった。 この大入りに団十郎はむろん得意であったらしく、わ....