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咽び泣く
「咽び泣く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
咽び泣くの前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
じない。この浮世には救いはない。ましてそんな奇蹟はね」 若者の声は湿って来た。
咽び泣く声がふと洩れた。 「俺は、俺は、こう思うのだ。成るなら皆んなが成るがいい....
「愛卿伝」より 著者:田中貢太郎
泣声のような物声が聞えてきた。趙は不思議に思うてその方へ耳をやった。それは確かに
咽び泣く泣声であった。 泣声はすぐ近くに聞えた。趙は何者の泣声だろうと思って、....
「葉」より 著者:太宰治
したでしょう。私なぞも物心地が附いてからは、日がな一日、婆様の老松やら浅間やらの
咽び泣くような哀調のなかにうっとりしているときがままございました程で、世間様から....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
刹那、顫い戦く二つの魂と魂は、しっかと相抱いて声高く叫んだ。その二つの声は幽谷に
咽び泣く木精と木精とのごとく響いた。 君と僕との離れがたき友情の定めは、このと....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
、お花さん狐が、覆面の落し差しに化けて、彷徨《さまよ》い出した方面と、今、子供の
咽び泣く音の起った方面とには、裏と表の相違がなければなりません。
裏の覆面は推....
「作男・ゴーの名誉」より 著者:チェスタートンギルバート・キース
っと信じるが、もそっと深い所に横たわっているんじゃ」彼はふと言葉をきらして小塔に
咽び泣く風音に耳を澄まして、それから更に続けた。 「故グレンジール伯は盗賊であっ....
「怪しの館」より 著者:国枝史郎
ああ」と娘の声がした。「どうでもよいのでございます。私のためなど、私のためなど」
咽び泣くような声であった。 「ただ私はお父様のために……」 「娘よ」と武士の声が....
「南蛮秘話森右近丸」より 著者:国枝史郎
えるような額を宛て、民弥はいつ迄もいつ迄も泣く。 どんどん春の夜は更けていく。
咽び泣く民弥の声ばかりが、その春の夜へ糸を引く。泣き死んでしまうのではないだろう....
「娘煙術師」より 著者:国枝史郎
当たるらしい。で、私娼もやって来なければ、他の客も避けて行くのであった。――と、
咽び泣く声がした。お粂が突っ伏して泣き出したのである。
鬱金色の縮緬の襷....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
なってからは追々に静まって、つい先刻の夜半となった頃は、音楽堂は静まり返り、ただ
咽び泣くバイオリンの糸、銀の竪琴のそそるような響きが、聴く人の耳にゆれるばかり。....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
に毀たれない、知恵と力とにあこがれよう」私は山かげの暗い洞穴のなかで、渓川の音の
咽び泣くのを聞きながら、神様に祈りました。「神様、あなたは私を造りなさったとき何....