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哀切
「哀切〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
哀切の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「文章」より 著者:芥川竜之介
読みはじめた。声はやや錆《さ》びを帯びた底にほとんど筆舌を超越《ちょうえつ》した
哀切の情をこもらせている。とうてい他人の作った弔辞を読み上げているなどとは思われ....
「一兵卒」より 著者:田山花袋
が鳴いていた。苦痛に悶えながら、「あ、蟋蟀が鳴いている……」とかれは思った。その
哀切な虫の調べがなんだか全身に沁み入るように覚えた。 疼痛、疼痛、かれはさらに....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
と涙ぐんだ。かの女が何と云い訳しようとも、道徳よりも義理よりも、そしてあんなにも
哀切な規矩男への愛情よりも、もっと心の奥底から子を涜したくなかった母の本能、しか....
「河明り」より 著者:岡本かの子
が、雪という天然の威力に押えつけられ、逼塞した隙間から、ふだんは聞取れない人間の
哀切な囁きがかすかに漏れるのを感ずるからであった。そして、これは都会の人間から永....
「斜陽」より 著者:太宰治
文章も、悲鳴に近い苦しげな調子で、こんどこそ薬をやめると、顔をそむけたいくらいの
哀切な誓いをするので、また嘘かも知れぬと思いながらも、ついまた、ブローチなどお関....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
自身に見ることはできなかった。庸三はもちろん他の男にも同じ表情をしあるいはもっと
哀切|凄婉な眉目を見せるであろう瞬間を、しばしば想像したものだったが、昨夜のよう....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
掛けた。気味の悪い声であった。主のない声であった。 そうしてそれは怨恨に充ちた
哀切|凄愴たる声でもあった。 そうして彼はその声に聞き覚えあるような気持ちがし....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
かも知れない。「天と赤兄と知る」という御一語は悲痛であった。けれども此歌はもっと
哀切である。こういう万一の場合にのぞんでも、ただの主観の語を吐出すというようなこ....
「アンゴウ」より 著者:坂口安吾
今も尚タカ子の目には火の空だけが焼き映されているのではないかと矢島は思った。その
哀切にたえがたい思いであった。 真実の火花に目を焼いて倒れるまでの一生の遺恨を....
「明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
きません。あるときはモノノケの発する声の如く怖しく、あるときは悲しめる美女の如く
哀切に、あるときは母を恋うる幼児の如く物悲しく、千差万別、泣くが如くむせぶが如し....
「犬を連れた奥さん」より 著者:神西清
が泣いたのは興奮からだった、二人の生活がこんな悲しい成行きになってしまったという
哀切な意識からだった。二人はこっそりとでなければ会えず、まるで盗人のように人目を....
「鸚鵡蔵代首伝説」より 著者:国枝史郎
ッ」と木精を返したか? いや、鸚鵡蔵は沈黙していた。 しかしどこからともなく、
哀切な、優しい声が、 「お篠オーッ」と呼び返すのが聞こえた。 「あ、あ、あ!」と....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
び姉の声、此度はやや間近に聞こゆ) 女子の声 ヨハナーン! (それに引きつづきて
哀切の調べにて「その日のために」の歌を歌うが聞こゆ) 美しき色ある糸の 機を織る....
「墓が呼んでいる」より 著者:橘外男
、もはやこの世の人ではない。 人の命の脆さ儚さが、今更のように胸に迫ってきて、
哀切|一入深きものがある。 東水の尾岬の突端に立つ。なるほど、故青年が激賞した....
「澪標」より 著者:外村繁
シャの歌」を教えられ、男女の間に恋愛の関係があることを解した。というより、ひどく
哀切なことのように思われ、むしろ私は憧憬に似た感情を抱いた。男と男との間にも、そ....