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「唆る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

唆るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
階段」より 著者:海野十三
いて、化粧料から来るのか、それとも女史の体臭から来るのか、とに角も不思議に甘美を唆る香りが僕の鼻をうったものだから、思わず僕は眩暈を感じて頭へ手をやった。「彼奴....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
れが、凝固しかかった血糊のように薄気味悪く思われるのであるが、その色は妙に神経を唆るのみのことで、勿論推定の端緒を引き出すものではなかった。そして、蔕のないとこ....
縮図」より 著者:徳田秋声
くなり、雨のふる春の日などは緑の髪に似た柳が煙り、残りの浅黄桜が、行く春の哀愁を唆るのであった。この家も土地建ち初まりからのもので、坪数にしたら十三四坪のもので....
仮装人物」より 著者:徳田秋声
ど文壇に評判のよかった「肉体の距離」というその青年の作品が、そうした葉子の感情を唆るにも、打ってつけであった。絶えず何かを求め探している葉子の心は、すでに娘の預....
」より 著者:徳田秋声
くんだった。」笹村は時々そんなことを言った。磯谷と女との以前の関係も、笹村の心を唆る幻影の一つであった。そしてその時の話が出るたびに、いろいろの新しい事実が附け....
放浪の宿」より 著者:里村欣三
こってしまった。その上に、支那服が砂を後足でかぶせてしまうと、もうすっかり食慾を唆る肉塊以外の何物でもなかった。 大腿部の関節に、短刀の刃が食い込んで、骨と刃....
現代唯物論講話」より 著者:戸坂潤
題に面接するには一時も忽せに出来ない筈であるのに、科学の知識はずっと大衆の関心を唆ることが少ない。併しそれにも拘らず、芸術特に文学と、科学との間には、一般にいく....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
。しかし、大盲谷をうずめる全部の油量は? セルカークさん、測れますかね」 と、唆るようにセルカークの顔をみる、折竹も相当の役者ではないか。俺を放て……そして、....
亡び行く江戸趣味」より 著者:淡島寒月
中にプレイしているのだと思っている。洋の東西、古今を問わず、卑しくも私の趣味性を唆るものあらば座右に備えて悠々自適し、興来って新古の壱巻をも繙けば、河鹿笛もなら....
球突場の一隅」より 著者:豊島与志雄
で分らなかった。それは口元から頬にかけたかすかな筋肉の運動だった。そこに人の心を唆るような、特に肉感を唆るような魅力があった。で松井はじっと其処に眼をつけた。 ....
掠奪せられたる男」より 著者:豊島与志雄
井の節穴を見つめていた。そしてしめやかな夕暮、心を落ち付かせながらまた爽かに心を唆る薄暮の一瞬の静けさ、それももう彼は一人で味わうことが出来なかった。彼の代りに....
野ざらし」より 著者:豊島与志雄
ら、慌てて電車を降りた。 ――そうしたことが、いつもなら佐伯昌作の愉快な気分を唆る筈なのに、今は却って、寂寥と云おうか焦燥と云おうか、兎に角或る漠然たる憂鬱を....
夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
珠は消えたが、まだ孔雀は空にいる」と云った言葉を憶えているだろう。可成り神秘感を唆る文句だけれども、その正体と云うのは、一種の異常視覚に過ぎないのだ。つまり、格....
『唯研ニュース』」より 著者:戸坂潤
っていた二三日は、わざと新聞をあまり見ないようにしていたので、新聞は新鮮な味覚を唆る物珍らしい生き物に見えた。 新潟版の処を開けて地方色を漁ろうとしていた私は....
黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
っくり口を開けている。高い山は雲に掩われたり近い前山の蔭になったりして、あの心を唆る雪の姿は牛首山あたりに少し光っているのが眼に入ったのみで、黒部の本流も亦出入....