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「唯さえ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

唯さえの前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
女の決闘」より 著者:太宰治
は聞えなかった。どこか屋根の上に隠れて止まっていた一群の鳩が、驚いて飛び立って、唯さえ暗い中庭を、一|刹那《せつな》の間、一層暗くした。 聾《つんぼ》になった....
刺繍」より 著者:島崎藤村
しい日を送ったことが多かった。彼女が後へ残して行った長い長い悲哀《かなしみ》は、唯さえ白く成って来た大塚さんの髪を余計に白くした。 おせんがある医者のところへ....
押絵の奇蹟」より 著者:夢野久作
なりましたことが、けっして偶然でありませぬ事を思い知りました時の空怖ろしさ……。唯さえ苦しいこの呼吸《いき》が絶え入るまで、ハンカチを絞って泣きましたことで御座....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
替えてみた。 そのあいだに何刻ほど経ったか。かれは固より記憶していなかったが、唯さえ静かな家中がしんとして、夜ももう余ほど更けているらしいと思う頃に、次の間の....
人民戦線への一歩」より 著者:宮本百合子
もし、そうだとするならば、第二の問が生れて来る。出来にくい相談と分っているものを唯さえ、無策無策で信頼を失っている今日の政府が、念入りに何故、農民に向って新しく....
死者の書」より 著者:折口信夫
。 当麻語部媼は、南家の郎女の脅える様を想像しながら、物語って居たのかも知れぬ。唯さえ、この深夜、場所も場所である。如何に止めどなくなるのが、「ひとり語り」の癖....
絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
と店に突き出されて、仙州、誰袖、東路などと、名前さえも変ってしまう。そんな訳で、唯さえ人淋しく、おまけに、変質者で、祖母とは名のみのお筆と一所に住んで行くのには....
帝展の美人画」より 著者:上村松園
た。 私もこの三、四年来、眼鏡がないと細い線など引くのに困るようになりました。唯さえ遅い筆ですのに、眼鏡を掛けて細いものを見詰めていますと、どうも疲れがひどい....
子供役者の死」より 著者:岡本綺堂
切れにきこえるばかりです。六三郎はもう生きているのか、死んでいるのか判りません。唯さえ蒼白い顔は藍のように変わってしまって、ただ黙ってうつむいていると、やがて吉....
つゆのあとさき」より 著者:永井荷風
《さわが》しい人の声やら皿の音に加えて、煙草の烟《けむり》や塵《ちり》ほこりに、唯さえ頭の痛くなる時分、君江は自分ながらも今夜は少し酔い過ぎたと思っている矢先、....