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「唯事〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

唯事の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
んでいる沙門の眼《ま》なざしが、いかに天狗の化身《けしん》とは申しながら、どうも唯事とは思われません。いや、反《かえ》ってその眼なざしには、いつもの気味の悪い光....
」より 著者:芥川竜之介
て、壁の上のウイル――べエトオフェンの肖像を冷淡にぼんやり眺め出した。これは勿論唯事ではない。お君さんはあのカッフェを解傭《かいよう》される事になったのであろう....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
夜ふけの寺の庭さきで、男と女が息を切って掴み合い、むしり合っている。それだけでも唯事ではない。留吉は雨戸の隙間《すきま》から覗いてみようと燥《あせ》ったが、何分....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
っかりしなけりゃあいけねえ。魚《さかな》は案外に大きいかも知れねえぞ」 「どうも唯事じゃあ無さそうですね」 「なにしろ、いいことを嗅ぎ出して来てくれた。さあ、帯....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ん。親分も御承知でしょうが、お庄屋さんの猪番小屋で五人も一緒に死ぬという、あれも唯事じゃありますまい」 云うときに店の前に餌を拾っている雀がおどろいたようにぱ....
国際殺人団の崩壊」より 著者:海野十三
をしたときに、汽船爆沈で大半溺死しましたし、これで四度目です。私はいよいよこれは唯事ではないと思うのですが……」 「唯事ではない――とは」博士が例の調子で呻くよ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
けの顔をしていたので、おっかさんはもう声が出なかったそうで……。これはどうしても唯事でない。せがれは何処でか非業の最期を遂げたに相違ないと、おっかさんは半気違い....
青蛙堂鬼談」より 著者:岡本綺堂
に思って、あわててそのあとを追って行ったが、張の姿はもう見えなかった。 「これは唯事でないらしい。」 羊得は引っ返して三、四人の朋輩を誘って、明るい月をたより....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
竹の向う側にかけていて、雑誌などを見ながらもちょいちょいと彼をみる、その目付きは唯事ではない。折竹も、このごろでは慄っとなっている。 また来たわよ、ご迷惑ねえ....
後光殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
りませんが」と柳江は漸と女性らしい抑揚になって、声を慄わせた。「その頃から、何か唯事でない精神的打撃をうけたと見えまして、昼間は絶えず物思いに耽り、夜になると取....
探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
忽ちに広がった。見舞いに来た興行師もおどろいて首をかしげていた。 「どうもこれは唯事でないらしい。医師にも容体が判らないというのはいよいよ不思議だ。」 富子は....
麻畑の一夜」より 著者:岡本綺堂
住民が見えなくなったんです。こうなると、騒ぎがいよいよ大きくなって、これはどうも唯事ではない。むかしの禍いがまた繰返されるのではないかという恐怖に襲われて、気の....
蜘蛛の夢」より 著者:岡本綺堂
られて行燈をつけるのも忘れて、暗いなかで小声で話しているのをみると、これはどうも唯事ではあるまいと、年のゆかないわたくしも迂濶にはいるのを遠慮しました。そうして....
歌麿懺悔」より 著者:邦枝完二
の枕許へにじり寄った。 「これはどうも。――」 歌麿は家主の顔を見ると同時に、唯事でないのを直感したもののそれにしても何んのことやら訳がわからず、重い頭を枕か....
小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
領の陣触れといい、先刻までも半病人の姿であった主人が俄かに出仕するといい、これは唯事でないと見た権右衛門は、すぐに師冬の館へ駈け付けて注進すると、師冬は蒼ざめた....