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啜る
「啜る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
啜るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
を搦ませた、遣放しな立膝で、お下りを這曳いたらしい、さめた饂飩を、くじゃくじゃと
啜る処―― 横手の衝立が稲塚で、火鉢の茶釜は竹の子笠、と見ると暖麺蚯蚓のごとし....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
かして三階にぐっすり寝込んだ。 次第であるから、朝は朝飯から、ふっふっと吹いて
啜るような豆腐の汁も気に入った。 一昨日の旅館の朝はどうだろう。……溝の上澄み....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
菓子|店、甘酒の店、飴の湯、水菓子の夜店が並んで、客も集れば、湯女も掛ける。髯が
啜る甘酒に、歌の心は見えないが、白い手にむく柿の皮は、染めたささ蟹の糸である。 ....
「決闘場」より 著者:岡本かの子
あった。 アイリスは、地を蹴る乱雑な響に腹底をいたぶられた。二人の交互に鼻血を
啜る音を聞いた。猛獣の荒々しい呼吸づかいさえ感じて総毛立った。これらの雑音の間に....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
をさそう風は梢をさわがして、茶店の軒も葭簀も一面に白い。わたしは悠然として心太を
啜る。天海僧正の墓のまえで、わたしは少年の昔にかえった。(明治32・4) 広島....
「人狼」より 著者:岡本綺堂
はわきまえて居りながら、夜になると忽ち狼のこころに変って、人の肉を喰い、人の血を
啜る……。こんな浅ましい因果な人間は、とても此世に生きてはいられないのでござりま....
「薬前薬後」より 著者:岡本綺堂
く救われたが、元来胃腸を害しているというので、それから引きつづいて薬を飲む、粥を
啜る。おなじような養生法を半月以上も繰返して、八月の一日からともかくも病床をぬけ....
「大阪発見」より 著者:織田作之助
の足を見たりしているが、汁が来ると、顔を突っ込むようにしてわき眼もふらずに真剣に
啜るのである。 喫茶店や料理店の軽薄なハイカラさとちがうこのようなしみじみとし....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
した。すると、はれあがった瞼が土門の顔をふしぎに若く見せた。 土門は珈琲を一口
啜ると、立ち上ってカウンターの方へ行き、電話を借りた。 「もし、もし、弥生座……....
「歌の円寂する時」より 著者:折口信夫
べないうちに亡くなって行った。 ていぶるの 脚高づくゑとりかくみ、緑の陰に 茶を
啜る夏 平明な表現や、とぼけた顔のうちに、何かを見つけようとしている。空虚な笑い....
「鬼を追い払う夜」より 著者:折口信夫
、目に見えぬ鬼の客が出て来て、坐りこむ。小石を水に入れて吸い物として勤めると、其
啜る音がすると言うではありませんかと問いますと、其は噂だけで、そんな事はありませ....
「銀三十枚」より 著者:国枝史郎
を過ぎた。明治銀行に相違なかった。地下室へ下りて行く夫婦連があった。食堂で珈琲を
啜るのだろう。また巨大な建物があった。旧伊藤呉服店であった。タクシはそこから右へ....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
めて今宵一夜は空虚の寂寞を脱し、酒の力を藉りて能うだけ感傷的になって、蜜蜂が蜜を
啜るほど微かな悲哀の快感が味わいたい。 風の疾い、星の凄いこの頃の夜半、試みに....
「知々夫紀行」より 著者:幸田露伴
の世の風に吹かれたる若き人はこうもあらぬなるべし。 かくてくず湯も成りければ、
啜る啜るさまざまの物語する序に、氷雨塚というもののこのあたりにあるべきはずなるが....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
、苦味のない款冬である、それから昨夕の残飯に、味噌をブチ込んで「おじや」を拵えて
啜る、昼飯の結飯は、焚火にあてて山牛蒡の濶葉で包む、晃平の言うところによると、西....