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喪心
「喪心〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
喪心の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
こそ万事休してしまうよりほかはありません。ですから新蔵は電話口を離れると、まるで
喪心《そうしん》した人のように、ぼんやり二階の居間へ行って、日が暮れるまで、窓の....
「二十世紀旗手」より 著者:太宰治
やしき性よ、ああ、あの貌《かお》、ふためと見られぬ雨蛙。」一瞬、はっし! なかば
喪心の童子の鼻柱めがけて、石、投ぜられて、そのとき、そもそも、かれの不幸のはじめ....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
の図星が当って、鉄漿《はぐろ》をつけ終り、ふと滝人の顔を見ると、その瞬間時江は、
喪心したようにクタクタになってしまった。彼女には、もうとりつく島もないではないか....
「癩」より 著者:島木健作
られるとそれが刺戟となってさらに激しく咳入るのであった。 洗面器から顔をあげて
喪心したようにその中をじっとのぞき込んだ時には、血はべっとりとその底を一面にうず....
「芽生」より 著者:島崎藤村
ったが、そこには車夫が多勢集って、戦争の話をしたり、笑ったりしていた。思わず私も
喪心した人のように笑った。やがて小諸行の馬車が出た。沈んだ日光は、寒い車の上から....
「新生」より 著者:島崎藤村
炉の中へ投入れた。見る間に紙は燃え上って、節子の文字は影も形もなくなった。岸本は
喪心した人のように煖炉の前に立って、投入れた紙片《かみきれ》が灰に成るのを眺めて....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
血みどろになって俯向きに倒れていた。そのそばには徳三郎が血に染めた短刀を握って、
喪心したようにぼんやりと坐っていた。どう見ても、かれが女を殺したとしか思えないの....
「電気看板の神経」より 著者:海野十三
こへやら消しとんでしまった。第三の犠牲者は、眉毛の細いお千代だった。捜査係長は、
喪心の態で、宿直室の床の上へ起き直ったまま、なかなか室から出て来そうな気色もみせ....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
それは、擬うかたないセレナ夫人の声であった。しかし、耳に入ると、レヴェズは
喪心したように、長椅子へ倒れかかったが、彼はかろうじて踏み止まった。そして頭をグ....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
いつ籤を引く?」 「ちょうど今夜でございます」 「今夜?」 と叫ぶと甚太郎は、
喪心したように眼を据えた。 「で、今は何刻だ?」 「籤まで二刻ございます」 「た....
「家」より 著者:島崎藤村
の立場で待ったが、そこには車夫が多勢集って話したり笑ったりしていた。思わず三吉も
喪心した人のように笑った。やがて馬車が出た。沈んだ日光は寒い車の上から彼の眼に映....
「坑鬼」より 著者:大阪圭吉
った。母親は急に気が変になってゲラゲラと笑いはじめた。レールの上へ叩きつけられて
喪心してしまったお品を、進み出て抱え上げた坑夫があった。父母の亡くなったお品にと....
「岩魚」より 著者:佐藤垢石
名状し難い気持ちに襲われて、賢彌は三里の下り路を、猿ヶ京の乗合自動車の立場まで、
喪心して走った。立場まで走りついたとき、ついに身を支えきれなくなって、思わず路傍....
「空中征服」より 著者:賀川豊彦
った。 「どこか、空いている監房にぶち込んでおけ! 」そうゴロツキの頭が叫んだ。
喪心した二人の身体は、市長の監房の隣に横たえられた。 その夜賀川市長は私設裁判....
「歌う白骨」より 著者:妹尾アキ夫
かりして彼は望遠鏡をしたにおいた。そしてパイプに煙草をつめて手摺にもたれかかり、
喪心したようにぼんやりと灰色の陸の線をみつめた。 三年間も彼はこの孤独な生活を....