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「嘗て〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

嘗ての前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
かりだ。彼女は自分の美徳を認めるものが現われ出るまで、それを沽ろうと企てたことが嘗てない。沽ろうとした瞬間に美徳が美徳でなくなるという第一義的な真理を本能の如く....
『聖書』の権威」より 著者:有島武郎
地上生活及び天上生活が開かれ始めねばなりません。こう云う所まで来て見ると聖書から嘗て得た感動は波の遠音のように絶えず私の心耳を打って居ます。神学と伝説から切り放....
聖書の読方」より 著者:内村鑑三
りて多くの異能を為ししに非ずやと云う者多からん、其時我れ彼等に告げて言わん、我れ嘗て汝等を知らず、悪を為す者よ我を離れ去れと、是故に凡て我が此言を聴きて之を行う....
深夜の市長」より 著者:海野十三
夜の市長」が八時半は愚か十時になっても十時半になっても帰って来ないのである。彼は嘗て時間や約束を無断で破ったことがなかった。ことに彼を訪ねてきたその人物が待って....
西湖の屍人」より 著者:海野十三
の垂幕、「美人戯毬図」とした壁掛けの刺繍、さては誤って彼が縁を欠いた花瓶までが、嘗て覚えていたと同じ場所に、何事もなかったかのように澄しかえって並んでいたのだっ....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
奔騰している有様が、夜目にもハッキリと見えた。そして、その次に、浮び出す景色は、嘗て関東大震災で経験したところの火焔の幕が、見る見るうちに、四方へ拡がってゆくの....
地球盗難」より 著者:海野十三
のぼった。会場の警戒線は会の始めから終りまで、二十度にわたって蹂躙された。それは嘗て政談演説会にも記録のないことだった。それは同時に全国中継でもって放送されたが....
二十五年間の文人の社会的地位の進歩」より 著者:内田魯庵
事は無いが、尽く皆文人対文人の問題――主張対主張の問題では無い――であって、未だ嘗て文人対社会のコントラバーシーを、一回たりとも見た事が無い。恐らく之は欧洲大陸....
空中漂流一週間」より 著者:海野十三
もこの「火の玉」少尉とよばれる六条|壮介と戸川中尉とは、同期生だったのだ。そして嘗ては、ソ満国境を前方に睨みながら、前進飛行基地のバラックに、頭と頭とを並べて起....
空襲下の日本」より 著者:海野十三
うん。お前もよく、無事で……」 灰になった家の前で二人は抱きあっていた。そこは嘗て、彼等が平和な家庭生活を営んでいたその地点だった。 「貴方。あなたは一度も帰....
軍用鼠」より 著者:海野十三
野十伍に自信がなかった。彼は生れつきアルコールに合わない体質を持って居り、いまだ嘗て酒杯をつづけて三杯と傾けたことがない。だから二日酔がどんな気持のものだかよく....
久米正雄」より 著者:芥川竜之介
は小路へ、姿を下駄音と共に消すのも、満更厭な気ばかり起させる訳でもない。 私も嘗て、本郷なる何某と云うレストランに、久米とマンハッタン・カクテルに酔いて、その....
滝田哲太郎氏」より 著者:芥川竜之介
中、僕の最も懇意にしたのは正に滝田君に違いなかった。しかし僕はどういう訳か、未だ嘗て滝田君とお茶屋へ行ったことは一度もなかった。滝田君は恐らくは僕などは話せぬ人....
画道と女性」より 著者:上村松園
町娘なのだから、それに取合せるのにはやはり風俗は同じ頃がいいと思い、人物の年輩は嘗て帝展に出品した後ろ向きに立った年増の婦人を想い浮かべた。品のある優雅な町方の....
深夜の客」より 著者:大倉燁子
で争わなければならない、という気も起るのです。そこで、なおよく記憶を辿ってみると嘗て妻の母が、冬子を譲治が知る以前に、親友が彼女へ求婚したことがあったと話したこ....