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「嚢中〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

嚢中の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
塗炭の苦しみをなさっているのじゃ」と、石工が答えた。 実之助は、多年の怨敵が、嚢中の鼠のごとく、目前に置かれてあるのを欣んだ。たとい、その下に使わるる石工が幾....
突貫紀行」より 著者:幸田露伴
ひさし》うす。 十日、東京に帰らんと欲すること急なり。されど船にて直航せんには嚢中《のうちゅう》足らずして興|薄《うす》く、陸にて行かば苦《くるし》み多からん....
観画談」より 著者:幸田露伴
で十里二十里歩く日もある、取止めのない漫遊の旅を続けた。 憫むべし晩成先生、|嚢中自有然として夕陽の山路や暁風の草径をあるき廻ったのである。 秋は早い奥州の....
酒友」より 著者:田中貢太郎
してみた。果して窖蔵があって銭がたくさん入っていた。車は大いに喜んで言った。 「嚢中|已に自ら有り、漫に沽うを愁うるなかれかね」 狐は言った。 「そうじゃない....
西湖主」より 著者:田中貢太郎
ばかりして陳が不意に帰ってきた。肥えた馬、軽い裘、ひどく立派な旅装をしていたが、嚢中には宝玉がみちていた。 陳の家はそれがために巨富の富ができた。陳はそれから....
俳諧瑣談」より 著者:寺田寅彦
してからの仕事だというような意味のことを言った。 蕪村は「諸流を尽くしこれを一嚢中にたくわえ自らよくその物をえらび用にしたがっていだす」と言っているそうである....
惜別」より 著者:太宰治
なければ、戦争は不安だ。早く調べて、報告してくれ。」 私は自分の財布を取出し、嚢中の金額を調べて外務大臣に報告した。 「よし、大丈夫だ。それだけあるなら大丈夫....
残されたる江戸」より 著者:柴田流星
巧みな才覚しすまして旦は町内のつきあいに我も漏れず、一日を他愛もなく興じ暮らして嚢中の空しきを悔いざる雅懐は、蓋し江戸ッ児の独占するところか。 上げ汐の真近時....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
銭《わらじせん》をせしめて来たとはいえ、千両箱を馬につけて来たわけではないし――嚢中《のうちゅう》おおよそお察しのきく程度のものであるのに、それをしもはたいてし....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
それを見て、この閨秀詩人は字を合わせ韻《いん》をさぐることに、多くの苦心をせず、嚢中《のうちゅう》のものを取り出すように、無雑作《むぞうさ》にこれだけの詩を書い....
初旅」より 著者:寺田寅彦
とを覚えている。大変に御馳走があって二の膳付の豊富な晩食を食わされたのでいささか嚢中の懸念があったではないかと思う。そのせいではっきりそれを覚えているのかもしれ....
幸福のうわおいぐつ」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
なり、ここに心ゆくかぎりの美はひらかれ モンブランの山|天そそる姿をあらわす。嚢中のかくもすみやかに空しからずば、はや あわれ、いつまでもこの景にむかいいた....
水晶の栓」より 著者:新青年編輯局
場所は警視庁、彼の隣室、その他には数十名の警官が伏せてある。ルパンを逮捕するのは嚢中の鼠を捕えるより易い。しかも彼の手には隠し持ったピストルが握られている。ニコ....
濹東綺譚」より 著者:永井荷風
平素《ふだん》夜行の際、不審尋問に遇う時の用心に、印鑑と印鑑証明書と戸籍抄本とが嚢中《のうちゅう》に入れてある。それから紙入には翌日の朝大工と植木屋と古本屋とに....
寺田先生の追憶」より 著者:中谷宇吉郎
ろの球皮ととり組んでいた。色々な秘密が次ぎ次ぎと見えて来た。それを先生は、まるで嚢中《のうちゅう》に物を探るようにとり出して並べて行かれた。私は、その後も、あの....