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「嚥下〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

嚥下の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
苦悩の年鑑」より 著者:太宰治
をしていた。いよいよこれは死ぬより他は無いと思った。 私はカルモチンをたくさん嚥下《えんか》したが、死ななかった。 「死ぬには、及ばない。君は、同志だ。」と或....
ろまん灯籠」より 著者:太宰治
らせたままの、あの、くすぐったい手つきでチョコレートをつまみ、口に入れるより早く嚥下《えんか》し、間髪をいれずドロップを口中に投げ込み、ばりばり噛み砕いて次は又....
食魔」より 著者:岡本かの子
アンディーヴの截片はお絹の口の中で慎重に噛み砕かれた。青酸い滋味が漿液となり嚥下される刹那に、あなやと心をうつろにするうまさがお絹の胸をときめかした。物憎い....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ので、あれほど致死量をはるかに越えた異臭のある毒物でも、ダンネベルグ夫人は疑わず嚥下してしまったのだよ。けれども、その思い付きというのは、けっして偶然の所産では....
十五年間」より 著者:太宰治
くさりかけて、めし粒が納豆のように糸をひいて、口にいれてもにちゃにちゃしてとても嚥下することが出来ぬ。小牛田駅で夜を明し、お米は一升くらい持っていたので、そのお....
あめんちあ」より 著者:富ノ沢麟太郎
ぞ!」 彼は死期の間に迫って来ているかのように叫んだ。そうして俺はこの「死」を嚥下《えんか》したかのように、――それは精神を錯乱させながら、徐《おもむ》ろに生....
やんぬる哉」より 著者:太宰治
やっているのだが、じっさい、鰻とちっとも変りが無いのですからね。」 私はそれを嚥下して首肯し、この医師は以前どんな鰻を食べたのだろうといぶかった。 「台所の科....
沓掛より」より 著者:寺田寅彦
どな大芋虫であるから咽喉につかえて容易に飲み込めない。それでも結局はどうにかして嚥下してしまった。 この数日の間にあひるの生活にはずいぶん大きな変化があったが....
生と死との記録」より 著者:豊島与志雄
子は云った。 雨が降り出した。雨の音が病院の中を一層しいんとさした。 堯は、嚥下作用も次第に衰えて来るようだった。十瓦の人乳を一度に飲めないで中途で止すよう....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
その他の時は、しきりに傷心し、恋愛に中毒し、追憶に悩まされ、あたかも一口の食物を嚥下《えんか》し得ないで反嚼《はんしゃく》してる白痴のように、同じ考えばかり繰り....
どぶろく幻想」より 著者:豊島与志雄
知れないけれど、それはただ偶然のチャンスで、俺が理解する自殺の決意なんか、毒薬を嚥下する際にも果してあったであろうか。切羽つまった羽目なんてものは、人生にはあり....
人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
から唸きの声が洩れてきた。 この事件の悪鬼は、死所を奈落に択んで、多量の青酸を嚥下したのだった。 しかし、村次郎はじめ一座の者は、しばらく放心したように立ち....
漱石氏と私」より 著者:高浜虚子
いと思って漸く一きれか二きれかを食ったが、漱石氏は忠実にそれを噛みこなして大概|嚥下してしまった。今一人の英語の先生は関羽のような長い髯を蓄えていたが、それもそ....
式部小路」より 著者:泉鏡花
と大きな懐中物で、四角に膨れた胸を撫でつつ、 「何ともいえないので、まるで熱鉄を嚥下す心持でがすよ。はあ、それじゃ昨日、晩方にも苦しみましたな。」 「ああ、そう....
大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
ずれば、一層の艶を増して鮮かに活動し、如何なる魚類にても、一度び之を見れば、必ず嚥下せずには已むまじと思われ、愈必勝を期して疑わず。 二仕掛を左右舷に下し終り....