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垂らし
「垂らし〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
垂らしの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「不思議な島」より 著者:芥川竜之介
このサロンの隅の長椅子に上等のハヴァナを啣《くわ》えている。頭の上に蔓《つる》を
垂らしているのは鉢植えの南瓜《かぼちゃ》に違いない。広い葉の鉢を隠したかげに黄い....
「一夕話」より 著者:芥川竜之介
ながら、声のない一座を見まわした。が、藤井はいつのまにか、円卓《テエブル》に首を
垂らしたなり、気楽そうにぐっすり眠《ね》こんでいた。
(大正十一年六月)....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
こう云いながら、また眼を向う河岸《がし》の空へ送りました。が、空はまるで黒幕でも
垂らしたように、椎《しい》の樹《き》松浦《まつうら》の屋敷の上へ陰々と蔽いかかっ....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
立《こだ》ちの間《あいだ》を見つめた。そこには四五本の棕櫚《しゅろ》の中に、枝を
垂らした糸桜《いとざくら》が一本、夢のように花を煙らせていた。
「御主《おんある....
「彼 第二」より 著者:芥川竜之介
いこんがし》には雪のつもった枯れ柳が一株、黒ぐろと澱《よど》んだ掘割りの水へ枝を
垂らしているばかりだった。
「日本《にほん》だね、とにかくこう云う景色は。」
....
「子供の病気」より 著者:芥川竜之介
が窪《くぼ》んでいた。今朝《けさ》妻が抱き起そうとすると、頭を仰向《あおむ》けに
垂らしたまま、白い物を吐《は》いたとか云うことだった。欠伸《あくび》ばかりしてい....
「湖南の扇」より 著者:芥川竜之介
計算し出した。僕の目の前には扇が一本、二尺に足りない机の外へ桃色の流蘇《ふさ》を
垂らしていた。この扇は僕のここへ来る前に誰《たれ》かの置き忘れて行ったものだった....
「おしの」より 著者:芥川竜之介
》も手頸《てくび》を一巻《ひとま》き巻いた後《のち》、かすかに青珠《あおたま》を
垂らしている。
堂内は勿論ひっそりしている。神父はいつまでも身動きをしない。
....
「或恋愛小説」より 著者:芥川竜之介
複製などもかかっている。ピアノも黒い胴を光らせている。鉢植えの椰子《やし》も葉を
垂らしている。――と云うと多少気が利《き》いていますが、家賃は案外安いのですよ。....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
であった。だから仲間の若者たちが河上の方へ行くのを見ると、彼はまだ滴《しずく》を
垂らしたまま、麗《うら》らかな春の日に目《ま》かげをして、のそのそ砂の上を歩き出....
「点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
のある樹。」
僕の母の実家の庭には背の低い木瓜《ぼけ》の樹が一株、古井戸へ枝を
垂らしていた。髪をお下げにした「初ちゃん」は恐らくは大きい目をしたまま、この枝の....
「魚河岸」より 著者:芥川竜之介
するとそこに洋食屋が一軒、片側《かたかわ》を照らした月明りに白い暖簾《のれん》を
垂らしていた。この店の噂は保吉さえも何度か聞かされた事があった。「はいろうか?」....
「三つの窓」より 著者:芥川竜之介
鼠の殖えなかったと云うためしはない。――××もまた同じことだった。長雨の中に旗を
垂らした二万|噸の××の甲板の下にも鼠はいつか手箱だの衣嚢だのにもつきはじめた。....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
静かにプラットフォオムへ横づけになった。僕はひとりこの汽車に乗り、両側に白い布を
垂らした寝台の間を歩いて行った。すると或寝台の上にミイラに近い裸体の女が一人こち....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
はのれんをかけた掛け茶屋越しにどんより水光りのする池を見ながら、やっと短い花房を
垂らした藤棚の下を歩いて行った。この掛け茶屋や藤棚もやはり昔に変っていない。しか....