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「塗下〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

塗下の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
彼は昔の彼ならず」より 著者:太宰治
に来た。彼は黄色い毛糸のジャケツを着て、ものものしくゲエトルをつけ、女ものらしい塗下駄《ぬりげた》をはいていた。僕が玄関へ出て行くとすぐに、「ああ。やっとお引越....
恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
の後姿が接近してきた。赤い帯、頭のてっぺんに載っている桃割れ。錆茶《さびちゃ》の塗下駄《ぬりげた》。十六、七の少女だった。少女はその小脇に風呂敷包《ふろしきづつ....
仮装人物」より 著者:徳田秋声
ものだと思われた。庸三がしとしと雨の降り募って来たアスファルトの上を、彼女が軽い塗下駄の足を運んでいる銀座の街を目に浮かべている間に、彼女の※ったタキシイがどこ....
骸骨の黒穂」より 著者:夢野久作
ャの愛嬌顔で、派手な紺飛白の袷に、花模様の赤|前垂、素足に赤い鼻緒の剥げチョケた塗下駄を穿いていた。 銀次は張合いが抜けたように、その姿を見上げ見下した。 ....
夢鬼」より 著者:蘭郁二郎
ゃい……」 と、この古ぼけた居酒屋に似合わぬ、陽気な、若い女の声がすると、赤い塗下駄を引っかけた、結綿の女がぱっと花が咲いたように出て来た。 「いらっしゃい、....
浮世絵の曲線」より 著者:寺田寅彦
。この基調をなす黒斑に対応するためにいろいろの黒いものが配合されている。たとえば塗下駄や、帯や、蛇の目傘や、刀の鞘や、茶托や塗り盆などの漆黒な斑点が、適当な位置....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
のであるから。 足が浮いて、ちらちらと高く上ったのは――白い蝶が、トタンにその塗下駄の底を潜って舞上ったので。――見ると、姫はその蝶に軽く乗ったように宙を下り....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
態に片袖をさしむけたのは、縋れ、手を取ろう身構えで、腰を靡娜に振向いた。踏掛けて塗下駄に、模様の雪輪が冷くかかって、淡紅の長襦袢がはらりとこぼれる。 媚しさ、....
芽生」より 著者:宮本百合子
がら、 「ほんまにしずかな好い日や」 こんな事を細い声で云った。 「そやなあ、塗下駄はいて大川端を歩いて見たいなも、どんなにいいやろ」 私達はぶきっちょな口....
智恵子の半生」より 著者:高村光太郎
彼女をあまり善く知らないのであるが、津田青楓氏が何かに書いていた中に、彼女が高い塗下駄をはいて着物の裾を長く引きずるようにして歩いていたのをよく見かけたというよ....
江戸芸術論」より 著者:永井荷風
た》の井筒《いづつ》を中央にして前髪姿の若衆|縞《しま》の着流《きなが》し羽織|塗下駄《ぬりげた》の拵《こしら》へにて居住《いずま》ひ、井筒の上に頬杖《ほおづえ....
鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
ママあることじゃ。申せば武士の日常茶飯事……」 スタスタと板縁から土間へ出て、塗下駄を突っかけ、行乞の深笠をとって頭につけた。そして、みずから戸を開け、みずか....
」より 著者:室生犀星
に汗のするほど驚いたのである。それは、いつかの晩の内儀でやはり町人づくりの派手な塗下駄で、日傘を差していた。 堀は、ふと目を垣そとに遣ったが、これも不思議そう....