塗盆[語句情報] » 塗盆

「塗盆〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

塗盆の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
ざいます。」 「嬢的、お妙さんか。」 と謂うと斉しく、まだ酒のある茶碗を置いた塗盆を、飛上る足で蹴覆して、羽織の紐を引掴んで、横飛びに台所を消えようとして、 ....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
する。軒別に手拭か半紙。入営に餞別でも貰った家へは、隊名姓名を金文字で入れた盃や塗盆を持参する。兵士一人出す家の物入も大抵では無い。 兵隊さんの出代りで、除隊....
ドグラ・マグラ」より 著者:夢野久作
小使いであった。もう余程の老人らしく、腰を真二つに折り屈めていたが、右手に支えた塗盆の上に煤けた土瓶と粗末な茶碗|二個とを載せて、左手にはカステラを山盛りにした....
平凡」より 著者:二葉亭四迷
て、夫《それ》で自《みずか》ら高しとしていたのだ。が、私の別天地は譬《たと》えば塗盆《ぬりぼん》へ吹懸《ふきか》けた息気《いき》のような物だ。現実界に触れて実感....
栃の実」より 著者:泉鏡花
お前さま、おだるけりゃ、お茶を取って進ぜますで。」「いいえ出ますから。」 娘が塗盆に茶をのせて、「あの、栃の餅、あがりますか。」「駕籠屋さんたちにもどうぞ。」....
古狢」より 著者:泉鏡花
さんは、まだ寝床に居たんです。台所の薬鑵にぐらぐら沸ったのを、銀の湯沸に移して、塗盆で持って上って、(御免遊ばせ。)中庭の青葉が、緑の霞に光って、さし込む裡に、....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
覗きたれば、面白や浪の、云うことも上の空。 トお茶|注しましょうと出しかけた、塗盆を膝に伏せて、ふと黙って、姥は寂しそうに傾いたが、 「何のお前様、この年にな....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
芸妓屋の門で聞かしてお見やす。ほんに、人死が出来ようも知れぬぜな。」と襟の処で、塗盆をくるりと廻す。 「飛んだ合せかがみだね、人死が出来て堪るものか。第一、芸妓....
白金之絵図」より 著者:泉鏡花
はいはい。」 ちと横幅の広い、元気らしい婆さん。とぼけた手拭、片襷で、古ぼけた塗盆へ、ぐいと一つ形容の拭巾をくれつつ、 「おや、坊ちゃん、お嬢様。」と言う。 ....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
ろの巻つけ帯で、草履の音、ひた――ひた、と客を見て早や用意をしたか、蟋蟀の噛った塗盆に、朝顔茶碗の亀裂だらけ、茶渋で錆びたのを二つのせて、 「あがりまし、」 ....
黒百合」より 著者:泉鏡花
いか、雨はどうだろうな。」 客の人柄を見て招の女、お倉という丸ぽちゃが、片襷で塗盆を手にして出ている。 「はい、大抵持ちましょうと存じます。それとも急にこうや....
ダス・ゲマイネ」より 著者:太宰治
馬場の足もとに、真赤な麻の葉模様の帯をしめ白い花の簪をつけた菊ちゃんが、お給仕の塗盆を持って丸く蹲って馬場の顔をふり仰いだまま、みじろぎもせずじっとしていた。馬....
江戸芸術論」より 著者:永井荷風
きょうじょう》には行人《こうじん》絡繹《らくえき》たり。岸の上なる水茶屋には赤き塗盆《ぬりぼん》手にして佇立《たたず》む茶汲《ちゃくみ》の娘もろとも、床几《しょ....