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墨
「墨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
墨の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
軸が、煤《すす》けた錦襴《きんらん》の表装《ひょうそう》の中に朦朧《もうろう》と
墨色《ぼくしょく》を弁じていた。私は折々書見の眼をあげて、この古ぼけた仏画をふり....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
つり上った、いかにも凄じい面《つら》がまえで、着ているものこそ、よれよれになった
墨染の法衣《ころも》でございますが、渦を巻いて肩の上まで垂れ下った髪の毛と申し、....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
っていたものです。現にその日も万八《まんぱち》の下を大川筋へ出て見ますと、大きく
墨をなすったような両国橋の欄干《らんかん》が、仲秋のかすかな夕明りを揺《ゆらめ》....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
等のいる所に、いつも人知れず行っていました。彼等が手本にしていたのは、皆支那人の
墨蹟《ぼくせき》です。しかし彼等の筆先《ふでさき》からは、次第に新しい美が生れま....
「葱」より 著者:芥川竜之介
葱の山の中に立っている、竹に燭奴《つけぎ》を挟んだ札《ふだ》の上へ落ちた。札には
墨黒々《すみくろぐろ》と下手《へた》な字で、「一束《ひとたば》四銭《よんせん》」....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
時たま、しわぶきの声をさせるものがあっても、それは、かすかに漂《ただよ》っている
墨の匂《におい》を動かすほどの音さえ立てない。
内蔵助《くらのすけ》は、ふと眼....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
これはすぐに気を変えて、
「何? 叔母さん、それは。」と云った。
「今神山さんに
墨色《すみいろ》を見て来て貰ったんだよ。――洋ちゃん、ちょいとお母さんを見て来て....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
黒板へ公式らしいものを書きはじめた。が、突然ふり返ると、さもがっかりしたように白
墨《はくぼく》の欠《かけ》を抛《ほう》り出した。
「どうも素人《しろうと》の堀川....
「秋山図」より 著者:芥川竜之介
ですから、そこへ行けば黄一峯《こういっぽう》の外《ほか》にも、まだいろいろ歴代の
墨妙《ぼくみょう》を見ることができるに違いない。――こう思った煙客翁は、もう一刻....
「手紙」より 著者:芥川竜之介
と額《ひたい》の禿《は》げ上った四十前後の男です。この男は確か左の腕に松葉の入れ
墨をしているところを見ると、まだ狂人にならない前には何か意気な商売でもしていたも....
「点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
僕や僕の姉などに画を描いてくれと迫られると、四つ折の半紙に画を描いてくれる。画は
墨を使うばかりではない。僕の姉の水絵の具を行楽の子女の衣服だの草木の花だのになす....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
文の妖婆《ようば》の話だったのです。私は今でもその若主人が、上布の肩から一なすり
墨をぼかしたような夏羽織で、西瓜《すいか》の皿を前にしながら、まるで他聞でも憚《....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
のみ、次第次第に剪除されて行くのみである。地上の人類が、現在の如き非合理的法律を
墨守して居る限り、先ず改善の見込は絶無であろう。 問『無邪気な小児は、死後直ちに....
「杜子春」より 著者:芥川竜之介
はどんなことが起るかと、心待ちに待っていました。 すると一陣の風が吹き起って、
墨のような黒雲が一面にあたりをとざすや否や、うす紫の稲妻がやにわに闇を二つに裂い....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
鬱金木綿の胴巻に入れて膚にしっかと着けたり。学校の教師朋友などが送別の意を表して
墨画の蘭竹または詩など寄合書にしたる白金布の蝙蝠傘あるいは杖にしあるいは日を除け....