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墨汁
「墨汁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
墨汁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「外套」より 著者:ゴーゴリニコライ
食ってしまうのである。胃袋がくちくなりはじめたなと気がつくと、彼は食卓を離れて、
墨汁の入った壺を取り出して、家へ持ち帰った書類を書き写しにかかるのである。もし、....
「冬の蠅」より 著者:梶井基次郎
たが――私は毎日自分の窓の風景から消えてゆく日影に限りない愛惜を持っていた。私は
墨汁のようにこみあげて来る悔恨といらだたしさの感情で、風景を埋めてゆく影を眺めて....
「冬の日」より 著者:梶井基次郎
た低地には、彼の棲んでいる家の投影さえ没してしまっている。それを見ると堯の心には
墨汁のような悔恨やいらだたしさが拡がってゆくのだった。日向はわずかに低地を距《へ....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
。 三十町に余るくらいな配縄をすっかりたくしこんでしまうころには、海の上は少し
墨汁を加えた牛乳のようにぼんやり暮れ残って、そこらにながめやられる漁船のあるもの....
「人造人間事件」より 著者:海野十三
中央へ出てきた。一座は鳴りをしずめ、片隅に互いの身体をピッタリより添わせた。 「
墨汁ヲ吹イタヨウニ、砲煙ガ波浪ノ上ヲ匐ッテ動キダシタ」 何にも動かぬ。 「重油....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
は幅が広く、見上げるような天井に、血の足痕もさて着いてはおらぬが、雨垂が伝ったら
墨汁が降りそうな古びよう。巨寺の壁に見るような、雨漏の痕の画像は、煤色の壁に吹き....
「投手殺人事件」より 著者:坂口安吾
一月十九日に契約したものである。大鹿の署名は墨筆で書かれているが、この部屋には、
墨汁も毛筆もない。 一、出血の状況から見て、加害者の衣服は血を浴びているであろ....
「土竜」より 著者:佐左木俊郎
の地に花を散らした大きな絨毯であった。そして、開拓されたところは黒々と、さながら
墨汁をこぼしたかのように、一鍬|毎に梅三爺の足許から拡がって行った。 「父! こ....
「三人の師」より 著者:上村松園
々しくなる。それで墨をすらしても荒々しいすりかたをするのでキメが荒れてなめらかな
墨汁が出来ない。 「墨すりは女にかぎる」 先生はそう言って墨だけは女の弟子にす....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
白の上服を着たのと、いま一人洋服を着けた少年と、処方帳をずばと左右に繰広げ、筆に
墨汁を含ませつつ控えたり。 薬の薫は床に染み、窓を圧して、謂うべからざる冷静の....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
わざ源太を召びたまいて十兵衛とともに塔に上られ、心あって雛僧に持たせられしお筆に
墨汁したたか含ませ、我この塔に銘じて得させん、十兵衛も見よ源太も見よと宣いつつ、....
「世間師」より 著者:小栗風葉
木の栓をする。その栓から糸のような黄銅の針線が管の突先までさしこんであって、管へ
墨汁を入れて字なり何なり書くと、その針線の工合で墨が細く切れずに出る、というだけ....
「死児を産む」より 著者:葛西善蔵
数なのであろう。そしてその細罫二十五行ほどに、ぎっしりと、ガラスのペンか何かで、
墨汁の細字がいっぱいに認められてある。そしてちょっと不思議に感じられたのは、その....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
、ひょろひょろと、横っ飛びに蹌けかかった黒んぼがある。此奴の面の黒いこと、鍋墨と
墨汁とを引っ掻き交ぜて、いやが上に、処きらわず塗り立て掃き立てたと見えて、光るも....
「エタに対する圧迫の沿革」より 著者:喜田貞吉
ず、高貴の御方でもこれを以て製した墨を手にし給いて、厭い給わないのみならず、その
墨汁を含ませた筆端は、しばしば筆執るものの唇に触れて汚穢の感じを起さないが如きは....