壁一重[語句情報] » 壁一重

「壁一重〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

壁一重の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
する奴だ」というように、柿江の笑いに同じた。 その時尋常四年生の教室――それは壁一重に廊下を隔てた所にあるのだが――がきゅうに賑やかになって、砂きしみのする引....
幻影の盾」より 著者:夏目漱石
の如き道ありて、所謂《いわゆる》ダンジョンは尤《もっと》も低く尤も暗き所に地獄と壁一重を隔てて設けらるる。本丸の左右に懸け離れたる二つの櫓は本丸の二階から家根付....
満韓ところどころ」より 著者:夏目漱石
じ》く勧工場の見世《みせ》に当る所を長屋の上り口にしてある。だから長屋と長屋とは壁一重《かべひとえ》で仕切られながら、約一丁も並んでいるばかりか、三尺の往来を越....
街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
かなくなったことである。 宵越しの銭溜め 東京に住んだ人は知っているであろう。壁一重向うは赤の他人である。引っ越しソバを配るだけの義理が済めば、あとはどこの馬....
鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
程か多くその人の表裏全幅を知悉し得ると云えよう。私はもはや二十日以上も、麻川氏と壁一重を隔てたばかりの生活を過した。私は、通常の客や友人同志の知らない「不用意の....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
うな行き詰りになっていた。そして、そこにも魔王バリの面が発見された。ああ、その石壁一重の彼方は、館の何処であろうか。法水は固唾を呑んで面の片眼を押した。すると、....
わが町」より 著者:織田作之助
たかと、初枝が言いかけるのを、 「お前は黙ってエ」 「黙ってられるかいな」 と、壁一重越しにきいていた〆団治が、くるくるした眼で、はいって来て、 「――他あやん....
」より 著者:島崎藤村
家の形を成して行った。お雪は住居の近くに、二人の小母さんの助言者をも得た。一人は壁一重隔てて隣家に住む細君で、この小母さんは病身の夫と多勢の子供とを控えていた。....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
に遠く梓川は、S字状に蜿ねっている、私の足音につれて、石がコロコロと崩れ落ちる、壁一重を隔てて、ざわざわがらがらと、滝のたぎり落ちるような音がする、嘉代吉を振り....
白日夢」より 著者:豊島与志雄
仕切られてる六七坪の庭が、何だか妙に窮屈だったし、それから殊に、隣りの家と棟続き壁一重越しに、全く同じ形に建てられてるのが、余りいい気持ではなかった。と云って、....
変な男」より 著者:豊島与志雄
…。第一こちらは、この通り粗末な室だし、向うは立派な八畳の座敷でしょう。それが、壁一重越しで、縁側続きなんだから、まるで私はあの人の徒者といったような感じです。....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
を閉じることができなかった。彼女のそばに同じ屋根の下にいることを考えた。彼女とは壁一重越しであった。ザビーネの室にはなんの音も聞えなかった、しかし彼女の姿が見え....
地虫」より 著者:小栗虫太郎
、ここへ運ばれてきたのか、不審に思わないわけにはゆかなかった。 すると、その時壁一重の向うに、誰やら、コトリコトリと歩き廻るような音が聴えてきた。今夜は客もな....
血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
この天国で、伊東頼母めを返り討ちに!」 また、呻くように云った。 恩讐壁一重 彼は、故郷からの音信で、忠右衛門の忰の頼母が、自分を父の敵だと云い、復....
地上」より 著者:島田清次郎
あり得ようか。しかしそうなってしまった。彼女は立って自分の部屋にあててあるという壁一重隔てた次の間に去った。強烈な光の下に、鏡台やかけがえの着物や三味箱などが取....