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「壁越し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

壁越しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
新生」より 著者:島崎藤村
て見ることを慰みにして、巴里へ来た序《ついで》にそうした余技を試みているらしい。壁越しに聞えて来る靴音は、その人に面と対《むか》っている時にも勝《まさ》って、隣....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
答える七之助の声も低いので、どっちの話も半七の耳には聴き取れなかったが、それでも壁越しに耳を引き立てていると、七之助は泣いているらしく、時々は洟をすするような声....
食魔」より 著者:岡本かの子
かだった。 彼は座布団の上に胡座を掻くと、ビール罎に手をかけ、にこにこしながら壁越しに向っていった。 「おい、頼むから今夜は子供を泣かしなさんな」 彼は、ビ....
碧蹄館の戦」より 著者:菊池寛
を吐いたわけである。 ある日、秀吉が諸大老と朝鮮の事を議しているとき、黒田如水壁越しに、秀吉の耳に入るように放言して曰く、「去年大軍を朝鮮に遣わされしとき、家....
」より 著者:豊島与志雄
つ》の熱っぽい気持で、ふっと眼を覚すと、その寝室の不潔な鬱陶しい蒸部屋の感じが、壁越しに左右へ伸び拡がり、或る巨大な重苦しさとなって、彼の上へのしかかってくる。....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
禁札を見るごとにかならずその畑の柵《さく》を飛び越してはいった。あるいは所有地の壁越しに果物《くだもの》をつみ取った。オットーは人に見つかりはすまいかと心配した....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
を貫いてふたたび高まってくる時、彼は激怒に駆られた。怒鳴りつけ、足を踏みならし、壁越しに彼女をさんざんののしった。しかし皆騒ぎ回ってるので、それに気づきもしなか....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
子《しし》のように猛《たけ》りたった。クリストフにはその姿は見えなかったけれど、壁越しに彼女の身振りを一々想像して、一人で笑っていた。ついに足音が近づいてき、扉....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
、すぐにそのことを尋ねた。彼女の答えでは、屋根裏の隣り同士の女で、彼がうなるのを壁越しに聞き、助けを求めてるのだと考えて、勝手にはいって来たのだった。口をきいて....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
た。 二人の室は隣り合っていた。たがいの寝台は一つの壁の両側にくっついていた。壁越しに低声で話ができた。眠れないときには、壁をそっとこつこつたたいて言った。 ....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
で囲まれた小さな庭に臨んでいた。二人が住んでる六階からは、他よりも少し低い正面の壁越しに、パリーになお多く見受けるような、人に知られないで隠れてる修道院の大きな....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
向こうの隘路《あいろ》に生えてる一本の栗《くり》の木が、影を投げていた。その低い壁越しに、金色の農作物が見えていた。なま暖かい風がそれに柔らかい波を打たせていた....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
っていた。ジャン・ヴァルジャンは元どおり襟飾《えりかざ》りをつけ上衣を着ていた。壁越しに投げ込まれた帽子も見つけて拾ってきた。ジャン・ヴァルジャンが上衣を引っ掛....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
ルシーという弁護士であるが、自分のいる室《へや》の隣が悪漢の巣窟《そうくつ》で、壁越しにその計画をすっかり聞き取った。――罠《わな》を張った悪漢はジョンドレット....
おせん」より 著者:邦枝完二
結のおしげさんがいうじゃァないか。お上さんとこへ結いに行くのもいいけれど、お隣の壁越しに伝わってくる匂をかぐと、仏臭いような気がしてたまらないから、なるたけこっ....