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「夏の虫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

夏の虫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
ア、秋」より 著者:太宰治
《ききょう》の花も、夏になるとすぐ咲いているのを発見するし、蜻蛉だって、もともと夏の虫なんだし、柿も夏のうちにちゃんと実を結んでいるのだ。 秋は、ずるい悪魔だ....
秋の暈」より 著者:織田作之助
風鈴の音もにわかに清い。蝉の声もいつかきこえず、部屋のなかに迷い込んで来た虫を、夏の虫かと思って、団扇ではたくと、ちりちりとあわれな鳴声のまま、息絶える。鈴虫ら....
茶の本」より 著者:岡倉覚三
若い奔流は、つぼみの花に向かって笑った。たちまち聞こえるのは夢のごとき、数知れぬ夏の虫の声、雨のばらばらと和らかに落ちる音、悲しげな郭公の声。聞け! 虎うそぶい....
」より 著者:島崎藤村
起きておいで」 こう妻を呼んで言った。お雪は炉辺で独り解き物をしていた。小さな夏の虫は何処から来るともなく洋燈の周囲に集った。 お雪が鳴らしていた鋏を休めた....
丹下左膳」より 著者:林不忘
罠《わな》へ落としこんだのみならず、何かと邪魔になる丹下左膳まで、飛んで火に入る夏の虫、自分から御丁寧にも、その穴へ飛びこんでくれたのだから、これこそほんとうに....
若き日の成吉思汗」より 著者:林不忘
《ジンギスカン》の自由にさせてたまるものか。(木華里《ムカリ》へ)飛んで火に入る夏の虫とは、貴様のことだ。地獄の迎えを待て! 言い捨てて、露台へ出ようとすると....
夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
る。 村一 内へ隠れただ、内へ隠れただ。 村二 真暗だあ。 初雄 灯を消したって夏の虫だに。 管八 踏込んで引摺出せ。 村のもの四五人、ばらばらと跳込む。内に、....
大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
風景ではなかった。ようやく芝居の前のアーク灯という古めかしく青い電灯がうようよと夏の虫を集め、宗右衛門町の茶屋の二階に暗いランプが点っていたに過ぎなかった。 ....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
たと、隠密《おんみつ》の手で引上げられてしまうにきまっていますよ。飛んで火に入る夏の虫とは本当にこのこと、三百両は惜しいけれども、銭金のことは、またどこでどうし....
丹下左膳」より 著者:林不忘
声をあげて、 「やっ! 手前《てめえ》はいつかの小僧じゃアねえか。飛んで灯に入る夏の虫――」 講釈場《こうしゃくば》仕込みの文句を口に、与吉、つかつかと土間へ....
探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
にひびいて聞こえた。お島さんはもう気が気でないらしい、僕を途中に置き去りにして、夏の虫のようにかがり火の影をしたって駈け出した。 そこにはもう警官が出張してい....
仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
一味の屯している中へ、一文字に突き入った。 「しめた!」 「斬れ!」 「火に入る夏の虫!」 「わッはッはッ、斬れ、斬れ、斬れ!」 嘲笑、罵声、憎悪の声の中に、....
魔像」より 著者:林不忘
しかも、人もあろうに、黒門町の壁辰のところへ面《つら》ア出すとは、飛んで火に入る夏の虫てえやつで、いよいよこいつの運の尽《つ》きだ――壁辰は、黙《だま》ったまま....
勝負師」より 著者:織田作之助
ぎ捨てた浴衣をまた着て、机の前に坐り直した拍子に部屋のなかへ迷い込んで来た虫を、夏の虫かと思って団扇ではたくと、チリチリとあわれな鳴き声のまま息絶えて、秋の虫で....
釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
滅の因、のう勘、匹夫《ひっぷ》の浅智慧《あさぢえ》、はっはっは。われから火に入る夏の虫だあな。」 「夏の虫あいいが、真《まこと》の与惣あどうなりましたえ?」 「....