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夏中
「夏中〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夏中の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「癩」より 著者:島木健作
、わずかながら目に見えるほどの変化はその外貌《がいぼう》に現われているのである。
夏中は窓を開け放していても、この病気特有の一種の動物的悪臭が房内にこもり、それは....
「熊の出る開墾地」より 著者:佐左木俊郎
》しい冬を送った。 翌年の春。藤沢は例年よりも早く開墾地に出て来た。そしてその
夏中を、雄吾の母は、藤沢と一緒に事務所で寝起きをしなければならなかった。もちろん....
「耽溺」より 著者:岩野泡鳴
革鞄をあけて、中の書物や書きかけの原稿などを調べながら、つくづく思うと、この
夏中の仕事は――いろんな考えを持って行ったのだが――ただレオナドの紹介ばかりが出....
「渾沌未分」より 著者:岡本かの子
して、洲の中の父の灯をちょっと見返ってから、貝原と水泳場を脱け出した。 貝原は
夏中七八|遍も小初を踊りに連れ出したことがあるので、ちょっとした小初の好きな喰べ....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
い金魚――そう気づくと復一は一種の征服慾さえ加っていよいよ金魚に執着して行った。
夏中、視察に歩いて、復一が湖畔の宿へ落付いた半ヶ月目、関東の大震災が報ぜられた。....
「家」より 著者:島崎藤村
格な兄の前では、いかにも姪の女らしい黙って視ているような様子がツラかった。彼は、
夏中手伝いに来ていて貰った時のような、親しい、楽々とした気分で、この娘と対い合う....
「雷」より 著者:海野十三
らといって、そんなに歓待して頂こうとは期待していません。ただ今申したとおり、この
夏中数ヶ所に撮影用の櫓を建てて廻る地所を貸して頂くことだけには、特に便宜を与えて....
「女客」より 著者:泉鏡花
るという騒ぎだ。」 「何のそれが騒ぎなことがあるもんですか。またいつかのように、
夏中蚊帳が無くっては、それこそお家は騒動ですよ。」 「騒動どころか没落だ。いや、....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
波が越すばかり。それから青芒の線を延して、左へ離れた一方に、一叢立の藪があって、
夏中日も当てまい陰暗く、涼しさは緑の風を雲の峰のごとく、さと揺出し、揺出す。その....
「獄中消息」より 著者:大杉栄
かったが、もう野分と言うのだろう、一陣の風がさらさらと音するかと思ううちに、この
夏中さしわたし二尺あまりもある大きな葉の面に思うまま日光を吸うていた窓さきの桐の....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
でならないんだよ」 「ふふん」というと舌なめずりをした。 「そうかと思うと今年の
夏中、フイと姿を消したりしてさ」 「旅へ行ったのさ、信州の方へな」 「その旅から....
「迷彩」より 著者:上村松園
どうしても時日がないことか分りましたので、とうとう中止してしまいました。それには
夏中の疲れやら何かで、私の健康もゆるしませんでしたし、不本意ですが止しました。 ....
「握り寿司の名人」より 著者:北大路魯山人
るところの事実なのだから、どうにも仕方がない。わたしなど、健康への投資と考えて、
夏中一流のまぐろで暮らすことになる。ところで、その一流のまぐろを常に備えて、味覚....
「エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
なかった。ついに、監視は解かれたが、八月の終りまで、完全な釈放は許されなかった。
夏中、エリザベスは間断なくベエコンに諮問した。ベエコンもいまは女王と伯爵の間の仲....
「洗いづくりの美味さ」より 著者:北大路魯山人
る黒だいの洗いよりは少々厚目につくり、水洗いしたものを直ちに舌上に運べば、まさに
夏中切っての天下第一の美肴として、誇るに足るものである。このかれい、なかなか大き....