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夏草
「夏草〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夏草の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
へ屋敷換えになって、今では誰も住んでいないので、門のなかは荒れ放題、玄関さきまで
夏草が茫々と生いしげっているというありさま。……昔は方々にこういう空屋敷があって....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
草原にはところどころに小さい水が流れていた。五つ六つの男の児が肩もかくれるような
夏草をかき分けて、しきりにばったを探していた。そういう少年時代の思い出がそれから....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
つ皆|蟹になりそうに見えるまで、濡々と森の梢を潜って、直線に高い。その途中、処々
夏草の茂りに蔽われたのに、雲の影が映って暗い。 縦横に道は通ったが、段の下は、....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
山吹つつじが盛だのに、その日の寒さは、俥の上で幾度も外套の袖をひしひしと引合せた。
夏草やつわものどもが、という芭蕉の碑が古塚の上に立って、そのうしろに藤原氏三代栄....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
高が、枯れた杉の木の揺ぐごとく、すくすくと通るに従って、一列に直って、裏の山へ、
夏草の径を縫って行く――この時だ。一番あとのずんぐり童子が、銃を荷った嬉しさだろ....
「かの女の朝」より 著者:岡本かの子
内の地面を落ち付かせていた。さび静まった其の地上にぱっと目立つかんなやしおらしい
夏草を供えた新古の墓石や墓標が入り交って人々の生前と死後との境に、幾ばくかの主張....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
にして段々に点した蝋の灯が、黄色に燃えて描いたよう。 向う側は、袖垣、枝折戸、
夏草の茂きが中に早咲の秋の花。いずれも此方を背戸にして別荘だちが二三軒、廂に海原....
「こま犬」より 著者:岡本綺堂
、さらに林の奥ふかく進んで行くと、明神跡は昔よりもいっそう荒れ果てて、このごろの
夏草がかなりに高く乱れているので、僕にはもう確かな見当も付かなくなってしまった。....
「鼠」より 著者:岡本綺堂
以外に、かれら夫婦を本当におどろかしたのは、四谷からさのみ遠くない青山の権太原の
夏草を枕にして、二人の若い男が倒れているという知らせであった。男のひとりは近江屋....
「壁の眼の怪」より 著者:江見水蔭
難所であった。それから蕨峠を越していよいよの三里は、雪が降れば路が出来るけれど、
夏草が繁ってはとても行来は出来ぬのであった。 勝成裕及び立花直芳の一行十五人は....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
後れて来るのを、判官がこの石に憩って待合わせたというのである。目覚しい石である。
夏草の茂った中に、高さはただ草を抽いて二三尺ばかりだけれども、広さおよそ畳を数え....
「火に追われて」より 著者:岡本綺堂
草原にはところどころに小さい水が流れていた。五つ六つの男の児が肩もかくれるような
夏草をかけ分けてしきりにばったを探していた。そういう少年時代の思い出がそれからそ....
「九月四日」より 著者:岡本綺堂
こんなことであろうと予想してはいたものの、よくも思い切って荒れ果てたものである。
夏草や兵者どもの夢の跡――わたしも芭蕉翁を気取って、しばらく黯然たらざるを得なか....
「活人形」より 著者:泉鏡花
影も無く、森々と松吹く風も、助けを呼びて悲しげなり。屹と心を取直し、丈に伸びたる
夏草を露けき袖にて押分け押分けなお奥深く踏入りて忍び込むべき処もやと、彼方此方を....
「広告」より 著者:伊丹万作
手の木の根元に遠き春の雲 松風や日々濃くなる松の影 あらましを閉せしのみの夕牡丹
夏草や野島ヶ崎は波ばかり 眼の前を江の奥へ行く秋の波 降る雪や明治は遠くなりにけり (昭和十二年四月二十六日)....