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夏草の
「夏草の〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夏草のの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
巻尺が光っていた。 川水は荒神橋の下手で簾《すだれ》のようになって落ちている。
夏草の茂った中洲《なかす》の彼方《かなた》で、浅瀬は輝きながらサラサラ鳴っていた....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
ざして原ノ町口に姿を現しました。 陸奥路は丁度夏草盛り。 しかし陸奥ゆえに、
夏草の上を掠めて夕陽を縫いながら吹き渡る風には、すでに荒涼として秋の心がありまし....
「家」より 著者:島崎藤村
、私も長良川に随いて六七里下りましたと申上げました時に……あの暑い盛りに……こう
夏草の香のする……」 「そうそう、木曾路を行くがごとしなんて、君から書いて寄した....
「シベリヤに近く」より 著者:里村欣三
げた。―― 空の青い、広漠たる曠野だった。が、もう何処かに秋の気が動いていて、
夏草の青い繁みに凋落の衰えが覗われる。白い雲の浮游する平原のはてには、丘陵の起伏....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
つ皆|蟹になりそうに見えるまで、濡々と森の梢を潜って、直線に高い。その途中、処々
夏草の茂りに蔽われたのに、雲の影が映って暗い。 縦横に道は通ったが、段の下は、....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
高が、枯れた杉の木の揺ぐごとく、すくすくと通るに従って、一列に直って、裏の山へ、
夏草の径を縫って行く――この時だ。一番あとのずんぐり童子が、銃を荷った嬉しさだろ....
「かの女の朝」より 著者:岡本かの子
も止まらぬ無数の小さな球となって放心したような広い地盤上の層をなしている。一隅に
夏草の葉が光って逞ましく生えている。その叢を根にして洞窟の残片のように遺っている....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
にして段々に点した蝋の灯が、黄色に燃えて描いたよう。 向う側は、袖垣、枝折戸、
夏草の茂きが中に早咲の秋の花。いずれも此方を背戸にして別荘だちが二三軒、廂に海原....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
巻三・二四三)と和えていられる。 ○ 玉藻かる敏馬を過ぎて
夏草の野島の埼に船ちかづきぬ 〔巻三・二五〇〕 柿本人麿 これは、柿本朝臣人麻....
「日本文化私観」より 著者:坂口安吾
をつくった、と言うことが出来る。その庭には、ただ一本の椎の木しかなかったり、ただ
夏草のみがもえていたり、岩と、浸み入る蝉の声しかなかったりする。この庭には、意味....
「大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
照らされていることで、その仄かな光の色が鬼火といおうか幽霊火といおうか、ちょうど
夏草の茂みの中へ蝋燭の火を点したような妖気を含んだ青色であるのが特に物凄く思われ....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
後れて来るのを、判官がこの石に憩って待合わせたというのである。目覚しい石である。
夏草の茂った中に、高さはただ草を抽いて二三尺ばかりだけれども、広さおよそ畳を数え....
「ラスキンの言葉」より 著者:小川未明
みを行路病者の墓の前にとゞめて、瞑想したのである。名も知れない人の小さな墓標が、
夏草の繁った一隅に、朽ちかゝった頭を見せていた。あたりは、終日、しめっぽく、虫が....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
それに二、三段の無造作な周辺、水ぎわの緑の草、盛りの紅葵、あるいは向日葵、様々の
夏草の花壇、柳の根といった風である。空には奥ゆかしい廂の上に枝垂柳が垂れている。....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
道しるべのように立っていた。左は東又から阿部木谷に通ずるもので、原を横さまに直ぐ
夏草の茂みへするすると隠れてしまう。昔鐘釣温泉へ通ったという路は此の東又を上り切....