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夏蜜柑
「夏蜜柑〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夏蜜柑の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「京に着ける夕」より 著者:夏目漱石
て得意に人通りの多い所を歩行《ある》いた事を記憶している。その時子規はどこからか
夏蜜柑《なつみかん》を買うて来て、これを一つ食えと云って余に渡した。余は
夏蜜柑《....
「芽生」より 著者:島崎藤村
、と私は思った。 病名は消化不良ということであった。この急激な身体の変化は多分
夏蜜柑の中毒であろうと言われた。私達の後を追って、大久保に住む一人の友達も、家の....
「猿飛佐助」より 著者:織田作之助
張りよるのは、まず我慢出来るとして、のっぺりした顔をしやがって、頭のてっぺんから
夏蜜柑のような声を出す。俺ア虫唾が走るんだ。第二の理由は、こ奴かねがね楓に横恋慕....
「光の中に」より 著者:金史良
だろ」 貞順は呻いた。老婆は急に何か思い出したとみえ急いで風呂敷包をほどくと、
夏蜜柑を二つばかり取り出した。 「
夏蜜柑だよ。食べると喉の乾きが少しはなおるかも....
「海賊と遍路」より 著者:黒島伝治
本当に私は会ってみたいと思っているのだが、出会さない。 島の人々は、遍路たちに
夏蜜柑を籠に入れ道ばたに置き一ツ二銭とか三銭の木札を傍に立てゝ売るのだが、いまは....
「浮動する地価」より 著者:黒島伝治
でいた。夏が近づいていた。 黄金色の皮に、青味がさして来るまで樹にならしてある
夏蜜柑をトシエは親元からちぎって来た。歯が浮いて、酢ッぱい汁が歯髄にしみこむのを....
「工場細胞」より 著者:小林多喜二
場近くに出た。凉み客が港の灯の見える桟橋近くで、ブラブラしていた。 ――林檎、
夏蜜柑、梨子は如何ですか。 道端の物売りがかすれた声で呼んだ。 ――林檎喰べ....
「縮図」より 著者:徳田秋声
うで、何とも言わなかった。 「お手紙ありがとう。」 「いいえ。」 紙にくるんだ
夏蜜柑にバナナを、女中が受け取ると、やがて三人で山荘の方へ歩き出した。 「お兄さ....
「黴」より 著者:徳田秋声
夜更けて帰ることもあった。笹村が、書斎で本など読んでいると、甥と二人で、茶の間で
夏蜜柑など剥いていることもあった。 「真実に新ちゃんはいい男ですね。」お銀は甥の....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
歌ってなんだか渇いて来たよ」 「お茶を持ってまいりませんで」と女中は風呂敷解きて
夏蜜柑、袋入りの乾菓子、折り詰めの巻鮓など取り出す。 「何、これがあれば茶はいら....
「斗南先生」より 著者:中島敦
で、子供のようにむっとしたまま横を向いてしまった。それからしばらくして、今度は、
夏蜜柑《なつみかん》を買って来いと言い出した。三造の買ってきた
夏蜜柑はうまくなか....
「霧の中」より 著者:豊島与志雄
な蛇がいるという話だった。米倉の主で、鼠をとって食べてるそうだった。 或る時、
夏蜜柑の木の根本に、大きな蛇がとぐろを巻いていた。正夫の手首ほどの大きさの青大将....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
次郎は縁側ににじり出て、あぐらをかき、ぼんやり庭を眺めた。午後三時の日が、庭隅の
夏蜜柑の葉を銀色にてらしているのが、いやにまぶしかった。 五六分もたつと、朝倉....
「澪標」より 著者:外村繁
は口喧しい母の側をあまり好まなかったようである。 庭には梅、桜、桃、椿、山吹、
夏蜜柑、紫陽花、柘榴《ざくろ》、金木犀、枇杷《びわ》、山茶花等、四季の花が咲く。....
「舞子より須磨へ」より 著者:小川未明
でうるさい。風もなく、日は、山地に照り付けて何処からともなく蝉の声が聞えて来る。
夏蜜柑の皮を剥きながら、此の草葺小屋の内を見廻した。年増の女が、たゞ独り、彼方で....