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夏雲
「夏雲〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夏雲の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「雪中富士登山記」より 著者:小島烏水
、私のもそうだという。なお一合ばかり登ると、変幻極まりない雲が、また出た、しかも
夏雲のように、重々しく平板状に横《よこた》わらないで、垂直に高く突っ立ち上り、我....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
町から、安東村へは五町に足りない道だけれども、場末の賤が家ばかり。時に雨もよいの
夏雲の閉した空は、星あるよりも行方|遥かに、たまさか漏るる灯の影は、山路なる、孤....
「家」より 著者:島崎藤村
の油絵まで明るく見せた。微かな心地の好い風も通って来た。玻璃窓の外には、遠く白い
夏雲を望んだ。三吉は窓の方へ行って、静かな病院の庭を眺めて、復た甥の枕許へ来た。....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
る。ほやり/\水蒸気立つ土には樹影黒々と落ち、処女の袖の様に青々と晴れた空には、
夏雲が白く光る。戸、障子、窓の限りを開放して存分に日光と風とを容れる。
今日の....
「おもかげ」より 著者:宮本百合子
昨日この下宿《パンシオン》のあるデエーツコエ・セローの公園のずっと先の広い野原で
夏雲を眺めながら摘んで来た花であった。しかし一昨日の宵からきょうまでの間は、ぼっ....
「渋江抽斎」より 著者:森鴎外
、維新後にまた磐と改めたのである。磐の嗣子|信治さんは今|赤坂氷川町の姉壻|清水
夏雲さんの許にいる。三十九年には脩が入京して小石川久堅町博文館印刷所の校正係にな....
「追慕」より 著者:宮本百合子
流れ動く淋しさである。 隅から隅まで小波も立てずに流れる魂の上に、種々の思いが
夏雲のように湧いて来る。真個《ほんと》に――。考えではない、思いである。 歌を....
「原爆詩集」より 著者:峠三吉
よろめいて 一斉に見上るデパートの 五階の窓 六階の窓から ひらひら ひらひら
夏雲をバックに 蔭になり 陽に光り 無数のビラが舞い あお向けた顔の上 のばした....
「ワンダ・ブック――少年・少女のために――」より 著者:ホーソーンナサニエル
たものは見えませんでした。何故なら、ちょうどその時、それは羊の毛を浮かべたような
夏雲の奥へ飛び込んだところだったからです。しかし、すぐまたそれは、雲の中から軽く....
「だいこん」より 著者:久生十蘭
蹟はあるものだ。 空の上で雷の眷族《けんぞく》が大騒ぎをしているような音がし、
夏雲の中からプラチナの針金がきらめくような光のマスがあらわれたと思うと、間もなく....
「駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
深いもの思いに沈んだ。 風はピッタリやんでしまって、陰欝な圧しつけられるような
夏雲に、夕照の色の胸苦しい夕ぐれであった。 出札掛りの河合というのが、駅夫の岡....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
晩もつづいた。そして昼は、ぱったり異状も見ず、六月の摂津平には、牛と農夫と、高い
夏雲を見るだけだった。 「敵はすっかり屏息した」 ようやく、公綱も疲れてきたら....