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「夕凪〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

夕凪の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
源おじ」より 著者:国木田独歩
海も山も絶えて久しくこの声を聞かざりき。うたう翁も久しくこの声を聞かざりき。夕凪《ゆうなぎ》の海面《うみづら》をわたりてこの声の脈ゆるやかに波紋を描きつつ消....
富士」より 著者:岡本かの子
のは見えなかった。翁は相変わらず螺の腹にえび蔓の背をしてこそおれ、達者で、あさけ夕凪には戸外へ出て、山々の方を眺めた。そして心の中で、わが眷属は、分身は、性格の....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
ている表情が生意気だと撲られた。泣きながら一里半の道を歩いて帰った。とぼとぼ来て夕凪橋の上でとっぷり日が暮れ、小走りに行くと、電燈をつけた電車が物凄い音で追い駈....
地球盗難」より 著者:海野十三
て夏ならば、昼間は海の方から陸に向って、涼しい風が吹き、朝と夕方には風のない朝凪夕凪があって、夜と共に陸から海へ向って風が吹くのが普通であるのに、決してそういう....
」より 著者:寺田寅彦
暗で、漁火一つ見えぬ。湿りを帯びた大きな星が、見え隠れ雲の隙を瞬く。いつもならば夕凪の蒸暑く重苦しい時刻であるが、今夜は妙に湿っぽい冷たい風が、一しきり二しきり....
海水浴」より 著者:寺田寅彦
中の家だったか、あるいはその親類の家だったような気がする。夕方この地方には名物の夕凪の時刻に門内の広い空地の真中へ縁台のようなものを据えてそこで夕飯を食った。そ....
海神に祈る」より 著者:田中貢太郎
が立てば大丈夫じゃ」 六 権兵衛は二番鶏を聞いて起きた。其の晩は夕凪で風がすこしもなかったので、寝苦しくておちおち眠れなかったが、室津を引きあげ....
瀬戸内海の潮と潮流」より 著者:寺田寅彦
が少なかったり、また夏になると夕方風がすっかり凪いでしまって大変に蒸暑いいわゆる夕凪が名物になっております。これらはこの地方が北と南に山と陸地を控えているために....
夕凪と夕風」より 著者:寺田寅彦
夕凪は郷里高知の名物の一つである。しかしこの名物は実は他国にも方々にあって、特に....
わが精神の周囲」より 著者:坂口安吾
るが、この時は催眠薬中毒のせいではなくて、未知の海へとびこんだための失敗だった。夕凪ぎになるとヨットも動かなくなり、ナメクジの海上歩行で辛くも辿りつく勇士もある....
競漕」より 著者:久米正雄
波が立った。 しかしいよいよ文農の競漕が初まろうというころになったら、珍らしい夕凪が来た。 選手は皆、長命寺の中の桜餅屋の座敷で、樺色のユニフォームを着た。....
二十一」より 著者:坂口安吾
一家総出で庭に水をまく。この土地は夕方になると風が凪ぎ、ソヨと動く物もない。母は夕凪ぎが大きらいで、庭一面に水をまかせて、せめて涼をとりたがる。僕は海から戻って....
備前天一坊」より 著者:江見水蔭
の娘が涼みに出た」 忽ち人は注目して、自然にお綾を取囲むので、さなきだに備前の夕凪。その暑苦しさにお綾は恐れをなして、急いで吾家へ逃げ込もうとした。 すると....
濹東綺譚」より 著者:永井荷風
うに破れたズボンに古下駄をはいて外へ出ると、門の柱にはもう灯《ひ》がついていた。夕凪《ゆうなぎ》の暑さに係《かかわ》らず、日はいつか驚くばかり短くなっているので....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
明るかった。やや紅と金とを交えた牛酪いろの一面のはるばるしい漣であった。いよいよ夕凪だなと、私は私の船室の方へ、穏かに、また安らかに歩みを返した。 旅にまで来....