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夕映え
「夕映え〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夕映えの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「単独行」より 著者:加藤文太郎
に入ってからは傾斜が少し急になるので飛ばせない。小屋に帰った頃、八森山や八ヶ岳が
夕映えに赤く輝いて嬉しかった。 一月六日 雪 冷泉小屋六・三〇 番所原一〇・〇〇....
「荷花公主」より 著者:田中貢太郎
った。孤山の麓にある水仙廟がすぐ眼の前に見えてきた。もう陽が入って西の空が真赤に
夕映えていた。女と老婆は水仙廟の手前から廟に沿うて折れて行った。その二人の顔に夕....
「柿の種」より 著者:寺田寅彦
ら線路を見渡した時に、夕日がちょうど線路の末のほうに沈んでしまって、わずかな雲に
夕映えが残っていたので、鉄軌がそれに映じて金色の蛇のように輝き、もう暗くなりかけ....
「恐竜島」より 著者:海野十三
朝やけの美しい空に、自然児《しぜんじ》としてのほこりを感ずることもあったし、
夕映えのけんらんたる色どりの空をあおいで、神の国をおもい、古今《ここん》を通じて....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
お珊が黙って、此方から差覗いて立ったのは、竜田姫の彳んで、霜葉の錦の谿深く、
夕映えたるを望める光景。居たのが立って、入ったのと、奴二人の、同じ八尺|対扮装。....
「死者の書」より 著者:折口信夫
寺庭は、白砂が、昼の明りに輝いていた。ここからよく見える二上の頂は、広く、赤々と
夕映えている。 姫は、山田の道場の※から仰ぐ空の狭さを悲しんでいる間に、何時かこ....
「嵐」より 著者:寺田寅彦
凭れて沖を見ていた。昼間から怪しかった雲足はいよいよ早くなって、北へ北へと飛ぶ。
夕映えの色も常に異なった暗黄色を帯びて物凄いと思う間に、それも消えて、暮れかかる....
「ある幻想曲の序」より 著者:寺田寅彦
太陽の没したばかりの水平線の彼方を眺めている。大きな涙の緒が頬を伝わって落ちる。
夕映えを受けた帆の色が血のように赤い。
夕映えの雲の形が崩れて金髪の女が現われ....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
なっていた。一つの人影が衣裳の衣擦《きぬず》れの音をたててはいって来た。名残りの
夕映えの光でクリストフは、喪服をつけた婦人の熱っぽい眼を認めた。彼女は室の入口に....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
た彼方《かなた》には、心ときめく名前、アーダ……。すべての人たちに平和あれ……。
夕映えの光が、静かな地平を取り巻いていた。クリストフは墓地を出た。そしてなお長い....
「安吾巷談」より 著者:坂口安吾
赤だ。おどろいて、頭を空の四方に転じる。どこの空にも、夕焼けはない。北の空だけが
夕映えなんて、バカなことがあるものじゃない。 熱海大火! 私は一散にわが家へ....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
来る。鸚鵡の啼き声が聞こえて来る。冬薔薇の匂いが匂って来る。陽の落ちた後の夕空を
夕映えが赤く染めている。明日は恐らく天気だろう。この食堂ともおさらばだ。そろそろ....
「白い道」より 著者:徳永直
だって、練兵場のやぶかげの近道を、いつも彼女が帰ってゆく土堤上の道にでると、もう
夕映えも消えた稲田甫の遠くは紫色にもやっていた。 「あなた、いつもここを、あの、....
「暗黒星」より 著者:黒岩涙香
く地平線に隠れ終るまでに凡そ一時間かかった。 日の全く入り終わった後で西の空に
夕映えの残るは誰も知る所である。日頃は赤く美しく見える。 この
夕映えが燃える火の....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
去るに際し一詩を浮かぶ。 帯水襟山対酔帰。 (港は水をめぐらせ山を襟のようにして
夕映えに対す、千変万化する気象の跋波磯である。この町の人々は風流の趣を解せず、み....