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「夕月〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

夕月の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
しくはなかった。小羊のような、まつ毛の長い、形のいい大きな目が、涙に美しくぬれて夕月のようにぽっかりとならんでいた。悲しい目つきのようだけれども、悲しいというの....
家霊」より 著者:岡本かの子
》の若葉の匂いを嗅いでも頭が痛くなるような娘であった。椎の若葉よりも葉越しの空の夕月を愛した。そういうことは彼女自身却って若さに飽満していたためかも知れない。 ....
二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
)だから面白い。 が、一夏縁日で、月見草を買って来て、萩の傍へ植えた事がある。夕月に、あの花が露を香わせてぱッと咲くと、いつもこの黄昏には、一時留り餌に騒ぐの....
茶の本」より 著者:岡倉覚三
のような人々はまた別の効果を求めた。遠州は庭径の着想は次の句の中にあると言った。夕月夜海すこしある木の間かな(三〇) 彼の意味を推測するのは難くない。彼は、影の....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
が玄関から出てきた。画描きらしく、眼を細めて空の色調を眺め取りながら、 「見ろ、夕月。いい宵だな」 といって、かの女を急き立てるように、先へ潜り門を出た。 か....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
も一種の爽快を感ぜずにはいられない。殊に尾花がようやく開いて、朝風の前になびき、夕月の下にみだれている姿は、あらゆる草花のうちで他にたぐいなき眺めである。 す....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
れました。小船が波に放たれます時、渚の砂に、父の倒伏しました処は、あの、ちょうど夕月に紫の枝珊瑚を抱きました処なのです。そして、後の歎は、前の喜びにくらべまして....
古狢」より 著者:泉鏡花
立離れた――一段高く台を蹈んで立った――糶売の親仁は、この小春日の真中に、しかも夕月を肩に掛けた銅像に似ていた。 「あの煙突が邪魔だな。」 ここを入って行きま....
死者の書」より 著者:折口信夫
見える小高い岡の上に出た時は、裳も、著物も、肌の出るほど、ちぎれて居た。空には、夕月が光りを増して来ている。嬢子はさくり上げて来る感情を、声に出した。 ほほき ....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
れずという。一尾ならず、二ツ三ツばかりある。普通の小さきものとは違いて、夏の宵、夕月夜、灯す時、黄昏には出来らず。初夜すぎてのちともすればその翼もて人の面を蔽う....
名人地獄」より 著者:国枝史郎
木も靡くといわれていた。 ある日甚三は裏庭へ出て、黙然と何かに聞き惚れていた。夕月が上って野良を照らし、水のような清光が庭にさし入り、厩舎の影を地に敷いていた....
おせん」より 著者:邦枝完二
参飴じゃ。何んと皆の衆合点か」 もはや陽が落ちて、空には月さえ懸っていた。その夕月の光の下に、おのが淡い影を踏みながら、言葉のあやも面白おかしく、舞いつ踊りつ....
我家の園芸」より 著者:岡本綺堂
も一種の爽快を感ぜずにはいられない。殊に尾花がようやく開いて、朝風の前になびき、夕月の下にみだれている姿は、あらゆる草花のうちで他にたぐいなき眺めである。 す....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
をふくほどの春風のほの温い肌ざわりである。やがて若蘆の芽のくきくきと出揃う頃は、夕月の影をくだいて満ち潮のなごりが白ら白らと頭越しに流れよるようになる。大空は梅....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
。 知らず知らず時が過ぎ去って、樹間を立ち騰る薄煙のあたりに、仄かに輝きそめた夕月が見えたりする。人々は名残惜しい焚火と別れて散り散りに退散する。細雨をくだし....