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「夜の底〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

夜の底の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
偸盗」より 著者:芥川竜之介
《きば》の立ったのを感じた。 するとその時である。月にほのめいた両京二十七坊の夜の底から、かまびすしい犬の声を圧してはるかに戞々《かつかつ》たる馬蹄《ばてい》....
羅生門」より 著者:芥川竜之介
は、剥ぎとった檜皮色《ひわだいろ》の着物をわきにかかえて、またたく間に急な梯子を夜の底へかけ下りた。 しばらく、死んだように倒れていた老婆が、死骸の中から、そ....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
あの猿のような老婆も感づかないほど、こっそり洞穴の外へ忍んで出た。 外には暗い夜の底に、谷川の音ばかりが聞えていた。彼は藤蔓《ふじづる》の橋を渡るが早いか、獣....
土曜夫人」より 著者:織田作之助
、降っていたのであろうか。頽廃の土曜の夜よりも、彼等の心を乱れに乱れさせた日曜の夜の底を、泥ンまみれにかきまわす雨であった。 セントルイスの夏子も泥にまみれ、....
玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
。獣の迷う影も見えなかった。野州から陸奥《みちのく》につづく大きい平原は、大きい夜の底に墓場のように静かに眠っていた。 事実に於いて、そこは怖ろしい墓場であっ....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
座を出ると、雪だった。しとしとと落ちて来る牡丹雪を、眩い光が冷たく照らしていた。夜の底が重く落ちて白い風が走っていた。 「寒い、寒い!」土門は動物的な声をだして....
世相」より 著者:織田作之助
一 凍てついた夜の底を白い風が白く走り、雨戸を敲くのは寒さの音である。厠に立つと、窓硝子に庭の....
親子」より 著者:有島武郎
将来の仕事も生活もどうなってゆくかわからないような彼は、この冴えに冴えた秋の夜の底にひたりながら、言いようのない孤独に攻めつけられてしまった。 物音に驚い....
シグナルとシグナレス」より 著者:宮沢賢治
さあいっしょに祈りましょう」 「ええ」 「あわれみふかいサンタマリヤ、すきとおる夜の底《そこ》、つめたい雪の地面《じめん》の上にかなしくいのるわたくしどもをみそ....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、廻って、くるくると巴に附着いて、開いて、くるりと輪に踊る。花やかな娘の笑声が、夜の底に響いて、また、くるりと廻って、手が流れて、褄が飜る。足腰が、水馬の刎ねる....
夜の靴」より 著者:横光利一
蹄の跡を踏むようにして泥を渡って行った。どれも同じように見える刈田ばかり続いた闇夜の底を一本細い路が真直ぐに延びていて、その中ごろまで来たとき、久左衛門はぴたり....
丹下左膳」より 著者:林不忘
りつづいて古びた水苔で足がすべる。蛇籠《じゃかご》を洗う水音が陰々と濡れそぼれた夜の底をながれていた。 右は、遠く荒天にそびえる筑波《つくば》の山。 ひだり....
アド・バルーン」より 著者:織田作之助
電車が途絶え、ボートの影も見えなくなってしまっても、私はそこを動きませんでした。夜の底はしだいに深くなって行った。私は力なく起ち上って、じっと川の底を覗いている....
郷愁」より 著者:織田作之助
はちょぼんとベンチに坐り、大阪行きの電車を待っていると、ふと孤独の想いがあった。夜の底に心が沈んでいくようであった。 眼に涙がにじんでいたのは、しかし感傷では....
秋深き」より 著者:織田作之助
かねる振舞いといい、妙に勝手の違う感じがじりじりと来て、頭のなかが痒ゆくなった。夜の底がじーんと沈んで行くようであった。煙草に火をつけながら、歩いた。けむりにむ....