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夜風
「夜風〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夜風の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「影」より 著者:芥川竜之介
れは護身用の指環なのよ。」
カッフェの外《そと》のアスファルトには、涼しい夏の
夜風が流れている。陳は人通りに交《まじ》りながら、何度も町の空の星を仰いで見た。....
「貉」より 著者:芥川竜之介
ばかりで、男の姿はどこにもない。娘は暫くあたりを見廻していたが、突然つめたい春の
夜風にでも吹かれたように、頬《ほお》をおさえながら、立ちすくんでしまった。戸の前....
「或る女」より 著者:有島武郎
た。日はいつのまにかとっぷりと暮れていた。じめじめと降り続く秋雨に湿《しと》った
夜風が細々と通《かよ》って来て、湿気でたるんだ障子紙をそっとあおって通った。古藤....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
の裁判だけれど、私が因果を含められて、雇を解かれたのさ」 白糸は身に沁《し》む
夜風にわれとわが身を抱《いだ》きて、 「まあ、おきのどくだったねえ」 渠は慰む....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
がら、縁日の神仏は、賽銭の降る中ならず、かかる処にこそ、影向して、露にな濡れそ、
夜風に堪えよ、と母子の上に袖笠して、遠音に観世ものの囃子の声を打聞かせたまうらん....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
た、ぐっと、さるを上げて、ずずん、かたりと開ける、袖を絞って蔽い果さず、燈は颯と
夜風に消えた。が、吉野紙を蔽えるごとき、薄曇りの月の影を、隈ある暗き葎の中、底を....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
照らしたのが、清く涼しいけれども、もの寂しい。四月の末だというのに、湿気を含んだ
夜風が、さらさらと辻惑いに吹迷って、卯の花を乱すばかり、颯と、その看板の面を渡っ....
「橋」より 著者:池谷信三郎
は実感がなかった。 2 夜が都会を包んでいた。新聞社の屋上庭園には、
夜風が葬式のように吹いていた。一つの黒い人影が、ぼんやりと欄干から下の街を見下し....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
盆を引寄せて、 「それ、そこが苦労性だと言うのです。窓を開けたまんまで寝たから、
夜風が入って湿っぽかったらただ湿っぽかったで可かろう。何も真暗な夜、田圃の中に、....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
それは僕の持っている最後の一枚の銀貨だった)この地下室の外へのがれることにした。
夜風の吹き渡る往来は多少胃の痛みの薄らいだ僕の神経を丈夫にした。僕はラスコルニコ....
「杜子春」より 著者:芥川竜之介
やっと耳にはいるものは、後の絶壁に生えている、曲りくねった一株の松が、こうこうと
夜風に鳴る音だけです。 二人がこの岩の上に来ると、鉄冠子は杜子春を絶壁の下に坐....
「夢の如く出現した彼」より 著者:青柳喜兵衛
ものが有ろう筈もない。 然るに湧き返る青年達の血潮は玄海灘から吹きつける肌寒い
夜風位いには驚きません。歌論は歌論へ、秋月は歌心へ、帰り行く友を送ってそこらまで....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
根、岩角と思うまで、足許が辿々しい。 さ、さ、とお絹の褄捌きが床を抜ける冷たい
夜風に聞えるまで、闃然として、袖に褄に散る人膚の花の香に、穴のような真暗闇から、....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
激昂の余り三度目の声は皺嗄れて、滅多打に振被った、小手の下へ、恐気もなく玉の顔、
夜風に乱るる洗髪の島田を衝と入れて、敵と身体の擦合うばかり、中を割って引懸けにぐ....
「活人形」より 著者:泉鏡花
、比企が谷の森の方を眺むれば、目も遥かなる畦道に、朦朧として婦人あり。黒髪|颯と
夜風に乱して白き衣服を着けたるが、月明りにて画けるごとく、南をさして歩むがごとし....