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夢幻的
「夢幻的〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夢幻的の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
な状態で、忘れようと思うこともないではないが、寧《むし》ろ繰返し繰返し考えては、
夢幻的の興味を貪《むさぼ》って居る事が多い。そんな訣から一寸《ちょっと》物に書い....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
むしろ四肢の指先にあった。すでに、眼がそこに及んでしまうと、それまでの妖怪めいた
夢幻的なものが、いっせいに掻き消えてしまって、まるで内臓の分泌を、その滓《かす》....
「三人の双生児」より 著者:海野十三
えなかった。だから妾は、幼い日の故郷の印象を脳裏にかすかに刻んでいるだけで、あの
夢幻的な舞台がこの日本国中のどこにあるのやら知らないのであった。 いまにして思....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
端正な相に軟げられ、実に何とも云えない静穏なムードが、全身を覆うているのだ。その
夢幻的な、荘厳なものの中からは、天使の吹く喇叭の音が聴えてくるかもしれない。今に....
「出家とその弟子」より 著者:倉田百三
す讃められるのでございましょう。 親鸞 仏さまのみ名をほめたてまつれ……(次第に
夢幻的になる)わしの心は次第に静かになってゆく。遠い、なつかしい気がする……仏さ....
「不思議なる空間断層」より 著者:海野十三
すると彼はまた訊ねるのだった。 「お前が最初の愛人を殺したときの光景はたいへん
夢幻的に美しく、かつまた単純なものだった。しかるに二度目に友人の妻君を殺したとき....
「絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
や一枚絵などを見馴れている少女だったので、全くそのような娘には、すぐ何かにつけて
夢幻的な世界が作られ、彼女自身も、その空気の中に溶け込んでしまう性癖が、なければ....
「十二神貝十郎手柄話」より 著者:国枝史郎
はない――と云う部屋は蝋燭の火と、それを映している鏡の反射とで、他界的と云おうか
夢幻的と云おうか、そう云ったような言葉をもって、形容しなければならないような、微....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
たせ、うずくまるようにして座っていた。 父ステツレルの怪異が――、あの妖怪的な
夢幻的な出現が、時を同じゅうして、いつも、痴れ果てたときの些中に起こるのは、なぜ....
「火の扉」より 著者:岸田国士
も、輪郭のぼやけた影絵のようなものになつていた。それは、いかにも現実ばなれのした
夢幻的な風景として康子の眼にうつるのだけれども、もうこゝからワッカナイは遠くない....
「夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ような、殺人被害者固有の表出を全く欠いていた。そればかりか、何んとなく非現世的な
夢幻的なものに包まれていて、その清洌な陶酔に輝いている両眼、唇の緩やかな歪みなど....
「京鹿子娘道成寺」より 著者:酒井嘉七
す。こうした事実と、あの殺人の情況とを考えますとき、私のそうした推察も、決して、
夢幻的ではない――と考えられないでございましょうか。ご記憶になりますように、あの....
「想像と装飾の美」より 著者:岸田劉生
形によって内なる美を先ず醒まされるのが多い。恐らく十中八位までそうで少数の異例が
夢幻的な美を幼い時から内に感じるのである。 かくて一般的には写実の道を執るのが....
「無表情の表情」より 著者:上村松園
此処に現われている、といったような微妙な幻想にさえ引きこまれて、息もつけずにその
夢幻的な世界に魂を打ちこんでしまうのです。 私はこの能楽の至妙境は、移して私ど....
「渋温泉の秋」より 著者:小川未明
。五六月頃の春の初めには、此の山中にも、うす緑色の色彩は柔かに艶かにあるものをと
夢幻的の感じに惹き入られた。 昼過ぎになると、日は山を外れて温泉場の屋根を紅く....