夾竹桃[語句情報] »
夾竹桃
「夾竹桃〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
夾竹桃の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「影」より 著者:芥川竜之介
近づいて来た。しかし日の光は消えたものの、窓掛けの向うに煙っている、まだ花盛りの
夾竹桃《きょうちくとう》は、この涼しそうな部屋の空気に、快い明るさを漂《ただよ》....
「めくら草紙」より 著者:太宰治
に移り住んだのは昭和十年の七月一日である。八月の中ごろ、私はお隣りの庭の、三本の
夾竹桃《きょうちくとう》にふらふら心をひかれた。欲しいと思った。私は家人に言いつ....
「令嬢アユ」より 著者:太宰治
には、紫陽花《あじさい》が咲いている。竹藪《たけやぶ》の中で、赤く咲いているのは
夾竹桃《きょうちくとう》らしい。眠くなって来た。 「釣れますか?」女の声である。....
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
子の音が戸の隙間から洩れてきこえて来た。遠くの樹に風が黒く渡る。と、やがて眼近い
夾竹桃《きょうちくとう》は深い夜のなかで揺れはじめるのであった。喬《たかし》はた....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
、V字型の谿《たに》には根樹《ガツマル》の気根、茄苳《カターン》、巨竹のあいだに
夾竹桃《きょうちくとう》がのぞいている。
「おい、どうした君、歩けないかね」
....
「新生」より 著者:島崎藤村
》の実もまさに熟しかけている野菜畠の間を歩いても、紅《あか》い薔薇《ばら》や白い
夾竹桃《きょうちくとう》の花のさかんに香気を放つ石垣の側を歩いても、あるいはこの....
「斜陽」より 著者:太宰治
このお庭には、一本も無いのね」 と、お母さまは、また、しずかにおっしゃる。 「
夾竹桃がたくさんあるじゃないの」 私は、わざと、つっけんどんな口調で言った。 ....
「十五年間」より 著者:太宰治
ければならなくなった日に、私は、たのむ! もう一晩この家に寝かせて下さい、玄関の
夾竹桃も僕が植えたのだ、庭の青桐も僕が植えたのだ、と或る人にたのんで手放しで泣い....
「黄金風景」より 著者:太宰治
合の牛乳だけが、ただそれだけが、奇妙に生きているよろこびとして感じられ、庭の隅の
夾竹桃の花が咲いたのを、めらめら火が燃えているようにしか感じられなかったほど、私....
「草藪」より 著者:鷹野つぎ
スに私は下りてすぐ前の椅子の一つに腰かけ、あたりを眺めた。病院境いの鉄柵までには
夾竹桃などの咲いた芝生があって、テレスに添うては篠懸の一列の木かげが、あたりを青....
「ゴルフ随行記」より 著者:寺田寅彦
ると罰金だそうである。 河畔の蘆の中でしきりに葭切が鳴いている。草原には矮小な
夾竹桃がただ一輪真赤に咲いている。綺麗に刈りならした芝生の中に立って正に打出され....
「聖女人像」より 著者:豊島与志雄
く、じわじわと降った。四五十分後には細雨となった。縁側の先端の軒先に、高く伸びた
夾竹桃の数本がある。その根本すれすれに、軒の屁から水滴が垂れた。そこに、大きなが....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
すっかり焼けてしまった。 渡来植物といえば、なお一つ気に掛けていたことがある。
夾竹桃である。鶴見は明治二十五年の夏になって、はじめて
夾竹桃を実見した。ところは....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
た。彼はそれから尚|頻繁く、北京の内外をさがし廻った。 こうしていつか月も経ち
夾竹桃や千日紅が真っ赤に咲くような季節となり、酒楼で唄う歌妓の声がかえって眠気を....
「日を愛しむ」より 著者:外村繁
私は入院を言い渡されたのである。 私はお茶ノ水駅のホームに立っている。濠の堤の
夾竹桃の赤い花が風に揺れている。真正面に病院の三階の診療室の窓も見えている。濠の....