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奇しき
「奇しき〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
奇しきの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「断崖の錯覚」より 著者:黒木舜平
と明けそめたころ、私はその青年と少女とのつつましい結婚式の描写を書き了えた。私は
奇しきよろこびを感じつつ、冷たい寝床へもぐり込んだ。 眼がさめると、すでに午後....
「宇宙女囚第一号」より 著者:海野十三
、その窓をのぞいてみた。 そのなかに見た刹那の光景! ああ、これほど世の中に
奇しき見世物があるであろうか。僕ははっと息をのんだまま、その場に硬直してしまった....
「三人の双生児」より 著者:海野十三
あの子だ」 それは確かに、妾の記憶にある懐しい幼馴染の顔だった。実になんという
奇しき対面であろう。色こそ褪せて居るけれど、彼の長く伸びた頭髪は、可愛いカンカン....
「黄鳥の嘆き」より 著者:甲賀三郎
遂げる途端に、彼から遺書を送られた。父子二代、こういう事が繰り返されるとは、何と
奇しき事ではないか。 書留の書類には添え手紙があった。それは宮野得次という全く....
「栃の実」より 著者:泉鏡花
えた、むすび髪の色白な若い娘は、唯見ると活けるその熊の背に、片膝して腰を掛けた、
奇しき山媛の風情があった。 袖も靡く。……山嵐|颯として、白い雲は、その黒髪の....
「めでたき風景」より 著者:小出楢重
ない家と場所が混雑せる長堀橋のちょっと東に存在する奇妙さを面白く思う。そしてこの
奇しき家の内部を知るものはただ永久に、蜘蛛と鼠とだけかも知れないわけである事を惜....
「大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
と深い山々と岩壁と雲の去来の中を走る船は竜宮行きの乗合の如く、全くあたりの草木の
奇しき形相と水だらけの世界は私に海底の心を起さしめた。ある旗亭でめしを食いつつ見....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
忘れない。南海霊山の岩殿寺、奥の御堂の裏山に、一処咲満ちて、春たけなわな白光に、
奇しき薫の漲った紫の菫の中に、白い山兎の飛ぶのを視つつ、病中の人を念じたのを、こ....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
えて、或は十畳、二十畳、五畳、三畳、真砂の床に絶えては連なる、平らな岩の、天地の
奇しき手に、鉄槌のあとの見ゆるあり、削りかけの鑪の目の立ったるあり。鑿の歯形を印....
「血液型殺人事件」より 著者:甲賀三郎
にも勝るものです。 さて、何から話していいでしょうか。あなたは私と毛沼博士との
奇しき因縁については、あら方御存じだと思います。二人はごく近い所に生れ、大学を卒....
「秘密の相似」より 著者:小酒井不木
とき、嬉しいというよりも、むしろびっくりしてしまいました。本当に私たちはどういう
奇しき因縁のもとに生れたので御座いましょう。あなたもまた私と同じように、左の眼の....
「ある自殺者の手記」より 著者:小酒井不木
上、今更、未練がましい言葉をつらねるのも気恥かしいが、思えば、君と僕とは何という
奇しき運命のもとに置かれたのであろう。 すでにその姓が同じ「加藤」であるという....
「知々夫紀行」より 著者:幸田露伴
り入るべしと、道のわかれに立札せるあり。二十八番の観音は、その境内にいと深くして
奇しき窟あるを以て名高きところなれば、秩父へ来し甲斐には特にも詣らんかとおもいし....
「六号室」より 著者:瀬沼夏葉
う今にも自分が捕縛されると思われて。そうして自らまた深く考えた。かくまでも昨日の
奇しき懊悩が自分から離れぬとして見れば、何か訳があるのである、さなくてこの忌わし....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
我身のめぐりに浮び出でて、さながらに立ち振舞へかし。
汝達の列のめぐりに漂へる、
奇しき息に、
我胸は若やかに揺らるゝ心地す。
楽しかりし日のくさ/″\の象を汝....