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奴凧
「奴凧〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
奴凧の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「人間失格」より 著者:太宰治
一週間ほど、ぼんやり、自分はそこにいました。アパートの窓のすぐ近くの電線に、
奴凧《やっこだこ》が一つひっからまっていて、春のほこり風に吹かれ、破られ、それで....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
言葉です。――不審に思って退屈男は、静かにふりむきました。 と同時に目の前を、
奴凧《やっこだこ》のように肩を張って、威張りに威張りながら通りぬけようとしていた....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
五郎の一枚絵にこれを供えてあるたア、二三春も存外の知恵巧者だぜ。行く先ゃ奥山だ。
奴凧《やっこだこ》のようになってついてきな」 紙ごと小指を懐中すると、ひた急ぎ....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
幕と三幕目を書いた。三幕目は金助が鯱鉾を盗むところで、家橘の金助が常磐津を遣って
奴凧の浄瑠璃めいた空中の振事を見せるのであった。わたしは二幕目の金助の家を書いた....
「鞄らしくない鞄」より 著者:海野十三
だが、およそ常識のある者なら、かの自称目撃者の言葉を信じようとはしないだろう。
奴凧《やっこだこ》や風船なら知らぬこと、重いトランクが横に吹き流れて行くとは思わ....
「宇宙尖兵」より 著者:海野十三
もうとするように手足をやけにばたばたさせるが、しばらく経つと四肢をぴんと張って、
奴凧のような恰好になり、それから先は板のように硬直して空間をしずかに流れていくの....
「凧の話」より 著者:淡島寒月
置いて、いろいろな絵を描いていたが、誠にいい気分のものであった。またこの秩父屋の
奴凧は、名優|坂東三津五郎の似顔で有名なものだった。この秩父屋にいた職人が、五年....
「寄席と芝居と」より 著者:岡本綺堂
座はあとである。 「三組盃」の作者はやはり三代目新七であったが、大切の浄瑠璃に「
奴凧」が上演された。この浄瑠璃が黙阿弥の絶筆である。菊五郎が
奴凧を勤めるに就いて....
「くろん坊」より 著者:岡本綺堂
から声をかけて彼に力を添えるにすぎなかった。 源兵衛は両手を枝にかけたままで、
奴凧のように宙にゆらめいているのである。その隣りの枝にはかの髑髏がかかっているの....
「多神教」より 著者:泉鏡花
はてな。 村人らも引入れられ、小首を傾くる状、しかつめらし。 仕丁 はあ、皆様、
奴凧が引掛るでござりましょうで。 ――揃って嘲り笑う。―― 神職 出来た。――掛....
「章魚の足」より 著者:海若藍平
もないのでただあの大きな眼玉から涙をホロホロ流して蹴られていました。 傍にいた
奴凧が大層気の毒がって、 「章魚さん、もう喧嘩はおよしなさい」 と仲裁しました....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
まず正月らしいものというので、凧をかんがえた。凧は先年この座で菊五郎の上演した「
奴凧」の浄瑠璃がある。何かそれとは離れたもので、凧の芝居はないかということになる....
「我楽多玩具」より 著者:岡本綺堂
甚く嬉しいんです。 私の少年時代の玩具といえば、春は紙鳶、これにも菅糸で揚げる
奴凧がありましたが、今は廃れました。それから獅子、それから黄螺。夏は水鉄砲と水出....
「影」より 著者:岡本綺堂
ろして、そのあとへ附いてゆく。) おつや うるさいねえ、この子は……。糸の切れた
奴凧のように、なぜそうからみッ八のサアビスじゃあお気に入りますまいけれど……。 ....
「押しかけ女房」より 著者:伊藤永之介
匂わせた初世の姿を見かけないことはなかつた。足のわるい源治の姿が、ヒヨツコリ/\
奴凧みたいに、そういう初世にいつもつきまとつて動いていた。 家では佐太郎の陰膳....