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媚
「媚〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
媚の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
《りょうけん》に過ぎなかった。いや、弟を見上げすぎたというよりも、沙金のみだらな
媚《こ》びのたくみを、見下げすぎた誤りだった。ひとり次郎ばかりではない。あの女の....
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
翌月の小遣いを捲《ま》き上げようとした。就中《なかんずく》彼に甘かった老年の母に
媚《こ》びようとした。勿論《もちろん》彼には彼自身の嘘も両親の嘘のように不快だっ....
「袈裟と盛遠」より 著者:芥川竜之介
で来る。しかしそれは何も、渡を嘲《あざけ》る微笑ではない。己はそうまでして、女に
媚《こ》びるあの男をいじらしく思うのだ。あるいは己の愛している女に、それほどまで....
「金将軍」より 著者:芥川竜之介
色の白い、風采《ふうさい》の立派《りっぱ》な男である。桂月香はふだんよりも一層|
媚《こび》を含みながら、絶えず行長に酒を勧めた。そのまた酒の中にはいつの間《ま》....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
けるように、せっせと万年筆を動かしていた。
看護婦は洋一の姿を見ると、ちょいと
媚《こび》のある目礼をした。洋一はその看護婦にも、はっきり異性を感じながら、妙に....
「路上」より 著者:芥川竜之介
そ御出でになるのが遅かったじゃないの?」
初子はわざと濃《こ》い眉をひそめて、
媚《こ》びるように野村の顔を見上げたが、すぐにまたその視線を俊助の方へ投げ返すと....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
もう一度同じ事を繰返した。大気都姫は始めて我に返ったように、滴《したた》るような
媚《こび》を眼に浮べて、
「ここでございますか。ここは――ここは猪が鼠より強い所....
「少年」より 著者:芥川竜之介
二本の編み棒を動かしている。それが眼は油断なしに編み棒の先を追いながら、ほとんど
媚《こび》を帯びた返事をした。
「あたし? あたしは来年十二。」
「きょうはどち....
「或る女」より 著者:有島武郎
めていたからあわても騒ぎもしなかった。目を鈴《すず》のように大きく張って、親しい
媚《こ》びの色を浮かべながら、黙ったままで軽くうなずこうと、少し肩と顔とをそっち....
「或る女」より 著者:有島武郎
在目前の歓楽をそんな心痛で破らせまいとした。そしてそのためには倉地にあらん限りの
媚《こ》びと親切とをささげて、倉地から同じ程度の愛撫《あいぶ》をむさぼろうとした....
「星座」より 著者:有島武郎
を忘れなかったからだ。
「お帰りなさいまし」
と簡単にいうと、奥さんは体全体で
媚《こ》びながらいそいそと立ち上った。渡瀬が注意せずにいられなかったのは立ち上っ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
たたい。」 「いやらし。」 と顔をそらしながら、若い女房の、犠牲らしいあわれな
媚で、わざと濡色の髱を見せる。 「うふふ。」と鳥打帽の頭を竦めて、少し猫背で、水....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
のごとく、お茶あがりまし、お休みなさりまし、お飯上りまし、お饂飩もござりますと、
媚めかしく呼ぶ中を、頬冠やら、高帽やら、菅笠を被ったのもあり、脚絆がけに借下駄で....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
。 浦子の姿は、無事に厠を背後にして、さし置いたその洋燈の前、廊下のはずれに、
媚かしく露われた。 いささか心も落着いて、カチンとせんを、カタカタとさるを抜い....
「寡婦」より 著者:秋田滋
愛情を弄んだのです。それを煽り立てさえいたしました。一人前の男にたいするように、
媚を見せたり、水を向けたり、愛撫をしたりしました。それにもかかわらず、私は不実だ....