嫁菜[語句情報] » 嫁菜

「嫁菜〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

嫁菜の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
ら》を飛びのいた。が、すぐにまた声を立てて笑いながら、ちょうど足もとに咲いていた嫁菜《よめな》の花を摘み取っては、一斉《いっせい》に彼へ抛りつけた。薄紫の嫁菜の....
千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
雑草のことを話したが、三月の石垣の間には、いたち草、小豆草、蓬、蛇ぐさ、人参草、嫁菜、大なずな、小なずな、その他数え切れないほどの草の種類が頭を持ち上げているの....
田舎教師」より 著者:田山花袋
校の付近の紅梅をえがいてみたが、色彩がまずいので、花が桃かなんぞのように見えた、嫁菜、蓬、なずななどの緑をも写した。 月の末に、小畑から手紙が届いた。少しく病....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
雪の様だ。彼岸花と云う曼珠沙華は、此辺に少ない。此あたりの彼岸花は、萩、女郎花、嫁菜の花、何よりも初秋の栄を見せるのが、紅く白く沢々と絹総を靡かす様な花薄である....
みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
粟の穂の黄色なのと段々になって、立蔽う青い霧に浮いていた。 と見向いた時、畦の嫁菜を褄にして、その掛稲の此方に、目も遥な野原刈田を背にして間が離れて確とは見え....
小春の狐」より 著者:泉鏡花
の伸びたのが枯交り、疎になって、蘆が続く……傍の木納屋、苫屋の袖には、しおらしく嫁菜の花が咲残る。……あの戸口には、羽衣を奪われた素裸の天女が、手鍋を提げて、そ....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
さ。酒はよし、景色はよし、日和は続く。どこへ行っても女はふらない。師走の山路に、嫁菜が盛りで、しかも大輪が咲いていた。 とこの桑名、四日市、亀山と、伊勢路へ掛....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
笠を冠っていました。……端折った片褄の友染が、藁の裙に優しくこぼれる、稲束の根に嫁菜が咲いたといった形。ふっさりとした銀杏返が耳許へばらりと乱れて、道具は少し大....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
、菊らしいのを薄色に染出したのが、白い山土に敷乱れた、枯草の中に咲残った、一叢の嫁菜の花と、入交ぜに、空を蔽うた雑樹を洩れる日光に、幻の影を籠めた、墓はさながら....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
い笑いの、口には歯がない。 お京がいとしげに打傾き、 「お祖母様、いまに可愛い嫁菜が咲きます。」 「嫁菜がの、嬉しやの、あなたのような、のう。」 糸七は仰天....
怨霊借用」より 著者:泉鏡花
だろう、山へ行く浴客も少くなかった。 お桂さんたちも、そぞろ歩行きした。掛稲に嫁菜の花、大根畑に霜の濡色も暖い。 畑中の坂の中途から、巨刹の峰におわす大観音....
万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
八七九〕 作者不詳 菟芽子は巻二の人麿の歌にもあった如く、和名鈔に薺蒿で、今の嫁菜である。春日野は平城の京から、東方にひろがっている野で、その頃人々は打連れて....
大正女流俳句の近代的特色」より 著者:杉田久女
質を描き分けている。 水嵩に車はげしや藤の花 多代女 うきことに馴れて雪間の嫁菜かな すて女 多代女は、水嵩に水車が激しくめぐっている山川らしい風景。....
夫人利生記」より 著者:泉鏡花
はまるでない。 月の夜はこの納屋の屋根から霜になるであろう。その石臼に縋って、嫁菜の咲いたも可哀である。 ああ、桶の箍に尾花が乱るる。この麗かさにも秋の寂し....
葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
うしろへ伸上って、そのまま出ようとする海苔粗朶の垣根の許に、一本二本咲きおくれた嫁菜の花、葦も枯れたにこはあわれと、じっと見る時、菊枝は声を上げてわっと泣いた。....