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「嫩葉〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

嫩葉の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
人間失格」より 著者:太宰治
いのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉《わかば》と共に、青い海を背景にして、その絢爛《けんらん》たる花をひらき、や....
食魔」より 著者:岡本かの子
者は何か人目につくものがあった。薄皮仕立で桜色の皮膚は下膨れの顔から胸鼈へかけて嫩葉のような匂いと潤いを持っていた。それが拓本老職人の古風な着物や袴を仕立て直し....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
に、常葉木も冬木もなべて、緑なる時にしあれば、遠近の畳なづく山、茂り合ふ八十樹の嫩葉、あはれとも看したまはな。 かしこくもわが大君、山深き岐岨にはあれど、ふたた....
雁坂越」より 著者:幸田露伴
見え渡る扮装をして、小籃を片手に、節こそ鄙びてはおれど清らかな高い徹る声で、桑の嫩葉を摘みながら歌を唄っていて、今しも一人が、 わたしぁ桑摘む主ぁ※まんせ、春蚕....
桜花を詠める句」より 著者:杉田久女
の花をさしている。その膝に、畳に、はらはらと早くもちりかかる花びらのつつましさ、嫩葉の色。山桜でこそ一層なつかしく感じられる。朝夕遠山の木の間に眺めくらした桜も....
竈の中の顔」より 著者:田中貢太郎
ので、江戸から伴れて来ている若党を供に伴れて戸外へ遊びに出た。 初夏の山の中は嫩葉に飾られて、見おろす路の右側の谷底には銀のような水が黒い岩に絡まって見えた。....
土竜」より 著者:佐左木俊郎
た。そして、彼方此方に散在する雑木の森は、夕靄の中に黝んでいた。萌黄おどしの樅の嫩葉が殊に目立った。緑のスロープも、高地になるに随って明るく、陰影が一刷毛に撫で....
岩魚」より 著者:佐藤垢石
いたが、後閑駅から西方八里奥にある法師温泉をめぐる山々や谷々は銀鼠色のやわらかい嫩葉が、ほんの少しばかり芽皮を破った雑木林に蔽われていた。 樹々の梢が芽吹く季....
藤の瓔珞」より 著者:田中貢太郎
た斜陽が微な光を投げていた。そこには躑躅が咲き残り、皐月が咲き、胸毛の白い小鳥は嫩葉の陰で囀っていた。そして、松や楢にからまりついた藤は枝から枝へ蔓を張って、そ....
一握の髪の毛」より 著者:田中貢太郎
るのであったが、時間がないのですぐそこに来た円タクに乗った。 自動車は山の手の嫩葉の多い街を往った。目黒駅の片隅には彼女が黒っぽい服装をして、人に顔を見られな....
春心」より 著者:田中貢太郎
眼の前には落寞とした世界がひろがっていた。 「これが日露戦争の勇士か」 右側に嫩葉をつけた欅の大木が一団となっているところがあった。そこは八幡宮の境内であった....
女の首」より 著者:田中貢太郎
って、茹卵や落花生を売る露店が見えていた。瓦斯の燈はその露店の後に垂れた柳の枝の嫩葉にかかっていた。 新吉の眼はその柳の嫩葉にちらちらと動いて往ったが、それに....
宇賀長者物語」より 著者:田中貢太郎
になるだろうと思って、おどおどしながら長者の顔を見あげました。その物に怯えた蘆の嫩葉の風に顫えるような顔を、長者の女は座敷の方から覗くようにしておりました。 ....
牡蠣船」より 著者:田中貢太郎
前にはまた小さな使者屋橋と云う橋が薄らと見えていた。 岸の柳がビロードのような嫩葉を吐いたばかりの枝を一つ牡蠣船のほうに垂れていたが、その萌黄色の嫩葉に船の燈....
水郷異聞」より 著者:田中貢太郎
湖の中へ出っぱって見えた。その路縁にも、そこここに白楊が立ち、水の中へかけて蘆の嫩葉が湖風に幽かな音を立てていた。白楊の影になった月の光の射さない処に一つ二つ小....