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「孤客〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

孤客の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
日光小品」より 著者:芥川竜之介
いう言が思い出された。なぜ思い出されたかはしらない。ただ、漂浪の晩年をロンドンの孤客となって送っている、迫害と圧迫とを絶えずこうむったあのクロポトキンが温かき心....
交尾」より 著者:梶井基次郎
の小さい流れがサーッと広びろとした江に変じてしまった。その瞬間私もまたその天地の孤客たることを感じたのである。 これはただこれだけの話に過ぎない。だが、こんな....
自転車日記」より 著者:夏目漱石
まで物置の隅《すみ》に閑居静養を専《もっぱ》らにした奴に違ない、計らざりき東洋の孤客に引きずり出され奔命に堪《たえ》ずして悲鳴を上るに至っては自転車の末路また憐....
草枕」より 著者:夏目漱石
た。雨は満目《まんもく》の樹梢《じゅしょう》を揺《うご》かして四方《しほう》より孤客《こかく》に逼《せま》る。非人情がちと強過ぎたようだ。 二 「おい」と声を掛....
竹青」より 著者:太宰治
鳴て秋気来る」と小声で吟じ、さて、何の面白い事もなく、わが故土にいながらも天涯の孤客の如く、心は渺として空しく河上を徘徊するという間の抜けた有様であった。 「い....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
愛の絆は断たれ、僅に能勢弁護士、木藤大尉の厚き同情があるとは云え、孤立無援、天涯孤客となった。而も自分は捕われの身である。彼は生きながらの呪いの魔となるより途は....
軽井沢」より 著者:寺田寅彦
たような明るい活気のある顔をしている中で、この老婦人だけがあたかも黄泉の国からの孤客のように見えるのであった。「どうかするんじゃないかしら。」そんな暗い予感の言....
十二支考」より 著者:南方熊楠
んか》を切り、汝はわれと同国人なるに色を以て外人の妻となりたるを鼻に掛け、万里の孤客たるわれを軽んずるより下女までも悪態を尽すと悪態極まる言を吐いたので大騒ぎと....
郷土的味覚」より 著者:寺田寅彦
自分は遠慮なくこのただ一つの柿を取上げた。少しはしたないような気はしたが、天涯の孤客だからと自分で自分に申し訳を云った。このローマの宿の一顆の柿の郷土的味覚はい....
不肖の兄」より 著者:豊島与志雄
心の上で、魂の上で、父や兄とは違った種族のような気がするのだ。何だかこう、天涯の孤客といったような気持なんだ。非常に自由で晴々としているが、また淋しい。そんな時....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
、彼はじっと見送った。 彼女の姿が見えなくなると、彼はこんどこそまったく異境の孤客となった。彼は母の手紙と恋しい肩掛とを手にしていた。肩掛を胸に抱きしめて、そ....
渡舟場」より 著者:豊島与志雄
よく燃えてあたりを輝らし、空をぽっと染めました。元彦はその火に温まりながら、天涯孤客の心境にあって、瞑想に沈みました。酒の酔いの中での瞑想は、しんしんと深まって....
日和下駄」より 著者:永井荷風
る。 その頃私は年なお三十に至らず、孤身|飄然《ひょうぜん》、異郷にあって更に孤客となるの怨《うらみ》なく、到る処の青山《せいざん》これ墳墓地《ふんぼのち》と....
西航日録」より 著者:井上円了
えに余、一吟して曰く、 街路如碁十里連、層楼処処欲衝天、通宵不断電車響、残夜猶驚孤客眠。 (街路は碁盤のごとく十里も連なり、高層の建物がところどころに天をつくほ....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
ち、その海水に映ずるところ、ことにうつくし。 万里雲晴月一輪、清光入就、照殺天涯孤客身。 (万里の雲はれて明月がうかび、その清らかな光は海を照らして銀色にかがや....