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安手
「安手〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
安手の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
さまがさつ屋らしく、そこらあたりの小格子《こごうし》遊女ででもあるのか、すこぶる
安手の女で、あまつさえもう大年増《おおとしま》です。しかし、ほかにどこにも要求の....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
周囲は鉛の壁になっていて、床の混凝土の上には、昨夜の集会だけに使ったものと見え、
安手の絨毯が敷かれてあった。なお、庭に面した側には窓が一つしかなく、それ以外には....
「聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
々に芯を押し出すのである。しかし、法水に固唾を呑ませたものは、この装置ではなく、
安手の襟飾を継ぎ合せて貼ってある、台の底だった。彼が何の気なしにそれを剥がして見....
「思想と風俗」より 著者:戸坂潤
であるかも知れない。 『文学評論』(三六年七月)の「馬鹿野郎」(志木守豪)は少し
安手だが珍しい風刺小説である。私は馬鹿という言葉をここから哲学的術語に仕立てるこ....
「思想としての文学」より 著者:戸坂潤
な自由と自由主義とだろう。横光自身の言葉を横から借りるが、「これは体臭という一番
安手な魔薬でもって真実を見る眼を失わしめるにもっとも好都合な初歩の手です。」そう....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
手拭をさえ惜しんだのは、余程身に沁みた不気味さに違いない。 女房は行きがけに、
安手な京焼の赤湯呑を引攫うと、ごぼごぼと、仰向くまで更めて嗽をしたが、俥で来たの....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
望み次第、京鎌倉でも、江戸大阪でも、どこへでもおともをしようじゃありませんかと、
安手《やすで》に出て、そうして、まあ取敢《とりあ》えず木曾街道を塩尻まで無事に同....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
よい草の匂いなどはおろか、うかうかすればカビの香りでもしそうである。 隅にある
安手な机と書棚、新子の荷物が部屋の真中に薄情そうに雑然と置かれてあるのを見ると、....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
くてはならぬわけだろう」 「なるほど、辻褄は合うがね。だが僕は、君の云うような、
安手な満足はせんよ。大いに出来ん。とにかく、もっと先を読んでみよう」 と、彼は....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
ある写楽の絵で、岩井喜代太郎が扮している、「関本おてる」の色刷を見て、 「だいぶ
安手な写楽のようだが、聴くところだと、喜代太郎はそれほどの背高じゃねえというそう....
「火の扉」より 著者:岸田国士
好きなんだ。その結果、彼は恋愛というものをしたことがない」 「よけいなお世話だ。
安手な恋愛に満足する手あいはそのへんにごろ/\している。おれは、生がいにたつた一....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
あ。煙管ならそっちにあるじゃねえか」 「お前さんの煙管でのみたいのさ」 「へん、
安手な殺し文句だ」 「でも、まんざらでもないでしょうよ」 「こんどは押し売りと来....
「演劇の様式――総論」より 著者:岸田国士
ァルス」の一典型であるが、このジャンルの演劇は、たまたま、民衆の、自然発生的な、
安手な娯楽的催しに端を発しがちであつて、文学的、乃至芸術的価値の点で、多くは、低....
「娘煙術師」より 著者:国枝史郎
師に印籠をすられた、――その若い武士であった。で、若い武士の思惑としては、たかが
安手の芸人である。どこかみすぼらしい露路の奥の、棟割長屋の一軒へでも、はいって行....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
くという意見で、たとえば私が下職の方の塗師の上手の方へやろうというのでも、政吉は
安手の方の塗師重で済まして、手間を省こうという遣り口。しかし昼間はすべて私が積り....