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「安物〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

安物の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:芥川竜之介
をうたうごとく勇壮活溌を極めている。それが黒い鍔広《つばびろ》の帽子をかぶって、安物《やすもの》らしい猟服《りょうふく》を着用して、葡萄色《ぶどういろ》のボヘミ....
土曜夫人」より 著者:織田作之助
はアん。やってるな」 露子は斜向いの座席から、握り合わされた貴子と春隆の手を、安物の彫刻を見るように、眺めていた。 血が通っていないようだった。恋人同士はこ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
の仕事が精々と思われるような店付きであった。表から覗くと、伊之助は小僧を相手に、安物の格子戸を削っていた。松吉は声をかけた。 「おい、伊之。親分がおめえに用があ....
夫婦善哉」より 著者:織田作之助
、北新地の売れっ妓の沽券《こけん》に関《かか》わるほどではなかった。第一、そんな安物ばかり食わせどおしでいるものの、帯、着物、長襦袢《ながじゅばん》から帯じめ、....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
斎の掛物のことを話し出した。 「わたしはあれを買った万さんを識《し》っているが、安物買いの銭うしないで、とんだ食わせものを背負い込んだと、しきりに滾《こぼ》しぬ....
とむらい機関車」より 著者:大阪圭吉
られたんです。と言うのは、つまり被害者の霊に対するささやかな供養の意味で、小さな安物の花環を操縦室の天井へ、七七日の間ブラ下げて疾走ると言う訳なんです。二人は早....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
よって景品をくれるのであるが、そのなかには空くじもたくさんある。中ったものには、安物の羽子板や、紙鳶や、羽根や、菓子の袋などをくれる。箒や擂りこ木や、鉄瓶や、提....
火薬船」より 著者:海野十三
現われ、とびらをたたいた。ポーニンがモロを呼びつけたのであった。用件は、多分例の安物のセメントの買いつけのことであろうとおもわれた。 「やあ、フランスさん。さっ....
伯林の降誕祭」より 著者:岡本かの子
しめる棒柱のように見えるので、下品には決して墜さないで、あとは軒並みの戦後独逸の安物屋、街のかみさんや、あんちゃん、ねえちゃんといった処へ、時々素晴らしい毛皮の....
怪異黒姫おろし」より 著者:江見水蔭
を引裂いてその腸でも引ずり出したかの様、朱塗の剥げた粗末な二重印籠、根付も緒締も安物揃い。 「これ見ろ」 美少年は身を顫わせ、眼には涙をさえ浮べて。 「御免な....
書籍の風俗」より 著者:恩地孝四郎
。ヨタ本形態である。略装は近頃本を安く作る必用上、よく採用されている。が、どうも安物をつくる心得で出版者も工作者もやっつけるのでいい味のものが尠くなる。気軽で親....
中支遊記」より 著者:上村松園
それほどの名所でありながら、いまはきたない。江水も画舫も思う存分きたない。そこへ安物店の食べもの屋が出ているのである。 大きな傘を立てただけの店で、油揚げのよ....
殿さまの茶わん」より 著者:小川未明
をおつけもうしまして、申しわけはありません。いつであったか、町へ出ましたときに、安物を買ってまいりましたのでございます。このたび不意に殿さまにおいでを願って、こ....
空中征服」より 著者:賀川豊彦
それがすべてインキのように黒い。天狗はびっくりして、「おい、鼻垂! お前の洋傘は安物だなア、染めた色が雨に溶けて出てくるようだぜ! 」 「そうかい? どこに? ....
梟の眼」より 著者:大倉燁子
なかったが、ダイヤではない、ルビーと真珠を鏤めたもので、銀髪婦人のと似てもつかぬ安物であった。春樹は顔を赤らめ、それを奪い取って自分のポケットに押し込み、 「生....